【西日本豪雨】行政の支援遠く「在宅避難者」の苦悩…健康状態に懸念も 岡山・倉敷市真備町
西日本豪雨で大規模な浸水被害にあった岡山県倉敷市真備(まび)町では避難所ではなく、損壊した自宅に住み続ける「在宅避難者」が目立ち始めている。避難所生活になじめないことが主な理由だが、情報や行政の支援などが届きにくいといった課題もある。在宅避難者の健康状態やニーズを把握しようと、倉敷市は保健師らによる戸別訪問を開始。災害関連死のリスクも高まる中、行政が実態把握を急いでいる。
「避難所は人が多くてプライベートもないからストレスがたまる。不便だとは分かっていても自宅のほうが良かった」。真備町の主婦、河合恵里さん(44)は被災後、浸水を免れた自宅2階で夫と長女の3人で寝泊まりを続けている。ただ豪雨被害から2週間以上が経過し、最近はこんな不安も抱くようになった。「他の被災者と何か違うことをしているのでは」
自宅が浸水し始めた今月7日午前、市内の避難所に一度は避難した。しかし座る場所はなく、眠るスペースも確保できない。長女が「避難所は嫌だ」「家に帰りたい」と泣き出したため、同日夜には避難所を後にした。
全壊した自宅に戻ったが、1階の冷房やトイレは水没で壊れ、生活用品も不足。「ここでは生活が持たないかもしれない」と不安もあったが、友人が食料品や調理器具などを持ってきてくれたため、何とか在宅避難を続けることができた。ただ河合さんは「避難所には支援物資があるが、自宅は届かない」と肩を落とす。
同町の女性(67)も同様に夫と在宅避難を続ける一人だ。「避難所は人が多い。電気が復旧していなくても自宅で過ごしたい」。しかし、夜は冷房が使えないため寝苦しく、1時間おきに目が覚める。情報も入らず「取り残されているような気持ちになる」とこぼす。
倉敷市は13日から、在宅避難者の健康状態やニーズを把握しようと保健師らが真備町で戸別訪問を開始。東日本大震災では、震災関連死の5割が発生から1カ月以内に起きたというデータもある。市は、関連死のリスクが高まるとされる1カ月以内に真備町の全戸訪問を実施したい考えで、「在宅避難者の現状を迅速に把握し、健康状態などを確認したい」(担当者)とする。
24日には真備町の大規模断水が解消するなど、生活は少しずつ改善されているが、日常を取り戻すまでは道半ばだ。河合さんは「自宅に避難するという決断をした以上、ここで家族全員で力を合わせて暮らしていく」と話した。