働き方改革 従業員を守り生かせるか
長時間労働をはじめ、日本企業の労働・雇用慣行を見直す「働き方改革関連法」が、新年度から施行2年目に入る。
青天井だった時間外労働(残業)に初めて導入された罰則付きの上限規制は、1年目の大企業に続き、4月1日から中小企業でも実施される。
同時に、非正規労働者の待遇改善を企業に求める「同一労働同一賃金」の制度も、大企業から順次始まる。
先行する大手などでは、業務の分担や在宅勤務の導入など、効率的で柔軟な制度を取り入れる動きがみられている。
ただ、人手不足などを背景に、大企業でも残業減らしや待遇見直しが十分に進んでいない現状がある。対応力の乏しい中小企業にはより難しい課題といえる。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で、国内外の経済、事業の環境は激変している。いかに働く人を守り、その力を生かせるか-という改革の根幹と実効性が問われよう。
昨年4月に大企業から始まった残業の上限規制は、長時間労働に歯止めをかけ、相次ぐ過労死や健康被害を防ぐのが目的だ。労働基準法で残業は上限「月45時間、年360時間」を原則とした。
だが、実際の取り組みは企業間の温度差が目立っている。
全国の主要企業110社に行った共同通信社の調査(1~2月)によると、規制前より残業が「減った」は52%。業務の整理・削減▽IT活用で効率化▽人事当局の監督強化-などの抑制策によるという。
一方で、残業時間が「変わらない」は40%、「増えた」も5%あった。京滋の主要107社が答えた京都新聞「2020年新春アンケート」でも、「前年並み」「増えた」で計54%を占めた。業務見直しは容易に進まず、手探りなのがうかがえる。
詳しく全国主要企業の調査を見ると、残業抑制が業績に「いい影響があった」が約17%あり、「悪い影響」は無かった。深夜勤務などの割増賃金が減る効果も表れている。
規制に従うだけでなく、業務の構造的問題を洗い出す契機にもなる。果実を従業員にも還元し、残業代の目減りによって意欲をそがないようしたい。
また、同一労働同一賃金への取り組み状況では、非正規の待遇改善に着手した企業で多い内容は休暇や手当、福利厚生の順だった。正社員と非正規労働者の不合理な待遇格差をなくす-という改革の「本丸」は給与や賞与、退職金だが、見直しはまだ一部にとどまっている。
厚生労働省は、禁止する不合理な格差例を指針で示したが、企業から「内容が曖昧」との声も聞かれる。非正規の労働、職務を客観的に評価し、昇給に反映する仕組みの整備が課題だろう。
現況は、新型コロナの感染拡大による経済活動の混乱から、企業による一方的な休業や非正規の雇い止めなどへの懸念が広がっている。
分業やテレワークの拡大など柔軟な対応によって事業と雇用を守ることにつなげられないか。企業努力を尽くし、行政が支援していく必要があろう。