メモ 台湾のデジタル担当大臣オードリー・タン氏 理想とするのは「誰も置き去りにしない社会」 好きな言葉「すべてのものにはヒビがある。そしてそこから光が入る」
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「政府は事実を伝えるだけでなく、ムードを変える必要がある」 オードリー・タンが台湾のコロナ対策で“ユーモア”を大切にした理由
『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』より
幼稚園と小学校に9カ所も通ったのは「毎年転校すれば、夏休みの宿題をしなくていいから(笑)」 “天才”オードリー・タンの子供時代とは
『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』より
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理想とするのは「誰も置き去りにしない社会」
好きな言葉「すべてのものにはヒビがある。そしてそこから光が入る」
この人を見出した台湾も素晴らしい。涙が出そうなぐらい理想的な社会。実現しますように…。
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オードリータン氏曰く、日本に必要なもの。
「世代」「分野」「立場」を乗り越えて、一つの目的のために一丸となり取り組む事が必要。
ー聞いてるか政治家。
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新型コロナを封じ込めに成功、世界が注目、オードリータンが世界一受けたい授業に出演。デジタルと民主主義、教育、AIと社会・イノベーション、自身の言葉で語りつくす!古市さん解説 オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る
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台湾のデジタル担当大臣 オードリー・タンさん
家庭でのやりとりは
ソクラテス式問答法だったそう。
普通無理ですよね大爆笑大爆笑大爆笑
「誰も置き去りにしない」
そこ言葉の裏にたくさんのエピソードが詰まっている気がしました。
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コロナに対する台湾政府のユーモア対策が素晴らしすぎる………
2019年12月から速攻で対策に移り、トイレットペーパーのデマが回れば面白ツイートで対抗、記憶が新しいうちに行動、国民の意見を参考にするだけでなく本当に議論に「持ってくる」。行動力の化身か
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このタンさんの行動、この人の努力あってこそやろうに日本ではやっぱり「環境が良かったから」で批判する人が多いからな…日本には言い訳するだけの人多すぎるもんな…
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「政府は事実を伝えるだけでなく、ムードを変える必要がある」 オードリー・タンが台湾のコロナ対策で“ユーモア”を大切にした理由
『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』より
新型コロナウイルスに対して水際対策やマスクの配給制で成果を挙げた台湾。IT担当相として実務を担ったのが、プログラマーのオードリー・タンだ。彼女の素顔や生い立ちを紐解いた『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』(アイリス・チュウ/鄭仲嵐 著)から一部を紹介する。
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マスク実名制4・0
タンは今回、民間の専門家との連携に成功し、人々が切望しているサービスをごく短期間で開発することに成功した。IQ180の持ち主であると言われている彼女は、その実行力とさまざまな逸話に注目した日本のメディアに、台湾の天才IT大臣として取り上げられたため、突然日本で話題の人物となった。
しかし、スポットライトを浴びてもおごることなく、タンは「私の身長は180㎝あるので、皆さん身長とIQを混同しているのでしょう」とジョークを言い、一転して真面目になると、「マスクマップの開発はコミュニティの友人たちの協力のおかげです。これは一種のソーシャルイノベーションであり、私1人の功績ではありません」とはっきりと述べた。
台湾はマスクを重要な防疫物資と見なし、その後もマスク購入システムを改良し続けた。薬局に行って並べば多くの人がマスクを購入できたが、20~39歳の若い世代にしてみると仕事や学業で忙しく、日中は思うようにマスクを買えないことに不満を抱きがちだった。公共衛生の専門家の基準によると、マスクの普及率が人口の7割以上になると予防効果が現れ、9割に達すると大規模な感染はおそらく起きない。
どうすれば若い世代がマスクを入手できるようになるか。
これが、次に解決すべき課題だった。政府はこれに対し、薬局に24時間営業のコンビニを加えた販売ルートの構築を図った。まず衛生福利部(厚生労働省)中央健康保険署の公式サイトでマスクを予約して料金を支払った後、コンビニで受け取ることができる仕組みだ。
今回は個人情報が絡むため、政府のITチームが任命されて、このプログラムの開発に当たった。数日が過ぎ、リリースが間近に迫った最後の段階で、突如解決できない問題が起き、リリース延期の懸念が生じた。タンはこれを受けて夜中、同チーム技術責任者に「私も手伝う」と連絡し、大臣の身分をかえりみず自らプログラミングメンバーに加わると、以降2日間、ヘルプの1エンジニアとして共に任務を完成させた。
3月12日、「マスク実名制2・0」がリリースされた。前述したように、あるネットユーザーが未購入のマスクを各国の医療従事者に寄贈することを提案したのは、それからしばらく経った頃だ。
その次のバージョンからは、コンビニでの予約と支払いが可能となった。4月22日には「マスク実名制3・0」がスタートし、台湾全土の1万店超のコンビニで、複合機に健康保険カードを差し込むだけでマスクの予約・購入ができるようになったのだ。そして、4月27日、中央健康保険署のソフトに「マスクを寄贈」という選択肢が加わると、わずか1週間で48万人を超える人々から計393万枚のマスクが寄付され、外交部(外務省)を通じて台湾の友好国に寄贈されることになった。これはネットユーザーから「マスク実名制4・0」と呼ばれている。
ロックダウンも休校も行わず、いったいどのように防疫対策が奏功したのか
台湾に住むある外国人はマスク購入システムの発展を目の当たりにし、「政策が常に進化している」と感慨を込めて語った。
感染状況が相対的に落ち着いていた台湾に、多くの国が興味を持った。都市封鎖(ロックダウン)も休校も行わず、いったいどのように防疫対策が奏功したのか、と。
英語が母語同様に流暢なタンは、マスクマップの成功体験を伝えようと、2月以降、欧米とアジア各国の20を超えるメディアから、次々とインタビューを受けた。直近の米国CNNのインタビューでは、台湾政府の防疫対策を3つの柱(3つのF)に分類してみせた。すなわち水際検疫の早期実施(Fast)、防疫物資の公平な分配(Fair)、防疫についての人々とのユーモア溢れるコミュニケーション(Fun)だ。
政府は事実を伝えるだけでなく、ムードを変える必要がある
「Fun(ユーモアコミュニケーション)」には2つの方法がある。
1つはフェイク情報に対するものだ。フェイク情報が世にあふれている今、タンは、政府は事実を伝えるだけでなく、ムードを変える必要があると考えた。うわさを流す人は、多くの人の怒りをかき立てて情報を拡散しようとする。そうであれば、ユーモアをもって本当の情報を発信すれば、疑念からの不安を解消できるだけでなく、ネットユーザーも「怒り」の気持ちを「喜び」に変えることができる。
タンは「1時間以内にユーモアを交えて本当の情報を発信し、反撃する」ことができれば、人々は笑いながら進んで真実をシェアしてくれるため、インターネット上で本当の情報がフェイク情報よりも速く伝わると語った。
「こうすれば、単に事実を明らかにするよりもずっと効果的だ」
また、英国BBCのインタビューではもう1つの「ユーモアコミュニケーション」に触れ、それが政府の防疫政策の発信にも使われたことを話した。例えば今回、防疫宣伝の大役を担った衛生福利部インターネット編集担当者が、愛犬の写真を同部公式Facebookページにミーム(吹き出し文字を組み合わせた画像)として載せたところ、意外にも熱烈な反響を呼んだのだ。
「その後、衛生福利部にはスポークスパーソンだけでなく、スポークスドッグもいることになりました」
タンは笑いながら海外メディアに英語で答えた。この愛らしい柴犬は、Facebook上でマスクの正確な着け方を伝えたり、感染状況が緊迫したときには、家の中でテレビや映画をみることを勧め、状況が落ち着いたときには「防疫新生活(感染症対策のための新しい生活様式)」で郊外に遊びに行こうと力づけたりした。
英語学習は「英語のラップを聴いて」
さまざまな海外メディアからのインタビューでは、どれだけ長い質問に対しても、タンはどう反応すべきかを瞬時に判断し、正確な英語でよどみなく答えた。中学校を離れて以降、進学していない彼女が、なぜこれほど英語を話せるのだろうか。
タンは独学で勉強し、適切な時期にさまざまな事物をうまく教材にして、自身の実力を高めてきた。20歳を過ぎてからはオープンソースソフトウェア(OSS)の国際フォーラムに積極的に参加して英語で発言や回答を行い、2005年からは英語でブログを書き始めた。2015年からは英語のラップミュージックにはまっている。
タンは英語学習の秘訣について、「英語のラップを聴いて勉強しています」と、気前よく教えてくれた。教材で一番のお気に入りは、米国ブロードウェイの有名なミュージカル『ハミルトン』だ。これは米国建国の父アレクサンダー・ハミルトンの生涯を描いた作品で、劇中独特の曲風でラップミュージックが多く挿入されている。
中でも彼女のお気に入りで一押しの数曲、「Wait for It」「Satisfied」などは、「考えずに歌える」くらいにまで覚え込んだと語った。メディア記者とのお茶会では、その場でリクエストに応えて披露したこともあった。
政治経験ゼロの素人が台湾の内閣で大臣になれた理由
なぜ、タンのような政治経験ゼロの素人が台湾の内閣で大臣になれたのか、多くの人が興味を持つだろう。
台湾政府は政治家のキャリアとして3種類のパスを用意している。1つ目は選挙だ。例えば、国会議員、県知事・市長、県・市議会議員は、必ず選挙で民意を得てその地位に就く。2つ目は国家の官吏となる道で、必ず国家公務員試験に合格し、下級公務員から始めなければならない。勤務成績が優れていれば通常は部会(省庁)の次長(副大臣)にまで昇進でき、少数だが部長(大臣)になる者もいる。国家試験で採用されると、政権が交代しても、仕事で失敗しなければ定年まで働くことができる。
3つ目は推薦だ。政権が成功する上で鍵となる職位、例えば行政院(内閣)の各部会の部長や次長には、総統や行政院長が各界のリーダーに意見を求めた上で、政策の推進に最適なキーパーソンを据える。そのため、学者から民間企業のトップ、さらには有名な社会運動家まで、部長または次長となる可能性がある。だが総統選挙によって政権が交代すると、閣僚名簿は通常すべて書き換えられる。
2016年、35歳のタンは推薦されて台湾の林全内閣のIT大臣となった。推薦者の1人は馬英九前総統時代に法政政委を担当した蔡玉玲だ。就任するタンに向かい、蔡は「政府運営のバージョンアップは任せましたよ!」と言った。
政委は部長に相当する職位だが、担当するのは通常、部会をまたぐ特別プロジェクトであり、ある部会特定の業務ではない。タンが就任する前は、内閣にはテクノロジー産業のハード面に関わる業務担当のテクノロジー政委がいるのみで、デジタルガバナンスを担当する政委はいなかった。
天才ハッカーが政府に参入
蔡が過去数年間政府で仕事をして気付いたのは、台湾中でスマートフォンが使われる時代に、政府の運営はまるで最も古いタイプの携帯電話のようだということだった。民意の収集から政策の研究・実行まで、どの過程においても、政府の対応はインターネットやテクノロジーを活用した臨機応変さを欠いていた。その結果、たとえ良い政策を決定しても、結局は人々の不満を招くことになっていたのだ。
「政府という機械は非常に複雑で、その中にいる各人がそれぞれ1つのボタンを管理している。1人がボタンを押しても動かず、全員が一斉にボタンを押さなければ前に進まない、そんな我々の機械は、切にバージョンアップが必要だ。特に部会をまたぐ新しい業務は、責任者となる人物を探すだけでもかなりの時間がかかる。なぜならどの部会も自分たちが主導すべきとは思っていないからだ」
蔡はこのように考えていた。
だが、マスクマップアプリのように、人々が今、最も必要としているサービスこそ、その「部会をまたぐ新しい業務」なのではないだろうか。
短髪で黒いメガネをかけ、洗練された印象の蔡は、台湾では少数の、産業界とデジタル法令の両方に通じた専門家だ。法学部卒業後に弁護士資格を取り、司法官を9年間務めた後、台湾IBMに転身して7年のうちに大中華区法務長となった。その後独立して法律事務所を開いたが、2013年、招かれて政務委員に就任した。任期の大半をかけて電子商取引(EC)のデジタル経済法整備に努めたほか、政府が市民と法令について討論するオンラインプラットフォーム「vTaiwan」も立ち上げた。
彼女は、民間のコミュニティの力を結集し、政策を推進することに長けていた。vTaiwanを設立する過程でシビックハッカー団体のg0vと接触し、そこでタンや中心メンバーと知り合っており、社会問題に対する彼らの熱意溢れる姿勢に深く共感していた。後に、g0vの友人に対し、「私も法律のハッカーになりたい」とさえ話し、その一部を実現している。
2016年、タンは蔡らの推薦により、シビックハッカーのDNAを携えて政府に参入し、大臣に就任した。
タンは行政院の政委事務室、つまりかつての蔡の事務室に入った。こうした「身分の交換」のような偶然について、蔡は冗談交じりに、
「大臣がハッカーになり、ハッカーが大臣になるというのは、たぶん史上初でしょうね」
と言った。
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幼稚園と小学校に9カ所も通ったのは「毎年転校すれば、夏休みの宿題をしなくていいから(笑)」 “天才”オードリー・タンの子供時代とは
新型コロナウイルスに対して水際対策やマスクの配給制で成果を挙げた台湾。IT担当相として実務を担ったのが、プログラマーのオードリー・タンだ。彼女の素顔や生い立ちを紐解いた『Au オードリー・タン 天才IT相7つの顔』(アイリス・チュウ/鄭仲嵐 著)から一部を紹介する。
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オードリー・タン
About Episode 1 : 35歳のIT大臣
――今回の新型コロナウイルス感染症を、プラスの面からどのように読み解きますか。
世界中の人々が同じ舟に乗り合わせた仲間であり、考え出された解決策は、みなが進んで世界と共有しています。世界中の人々が共に呼吸し、同じウイルスで病気にもなります。国境や民族で区別はありません。
世界中が運命でつながっていることを、多くの人々がついに深く理解しました。
――デジタル政委の任期内で、どのようなことをご自身の努力で変えたいと思いますか。
私の仕事は自分が変化を起こすことではありません。誰かが何らかの変化を生み出した時、それがデジタルトランスフォーメーション(DX)であれ、持続可能な移行(サステナビリティートランジション)であれ、その変化が起きた時から拡散しやすくなるようにすることです。言い換えると、私はその考え方を増幅(エンパワー)し、拡大させるだけです。
すべての物事は変化し、変化するということだけが不変です。これは『易経』の考えですが、私は、社会の各界の人々が、私たちが現在経験している変化を理解できるよう手伝いたいと考えています。
――あなたは世間が認める天才ですが、世間の人は「天才にできないことはない」と考えます。あなたには困難と思えることがありますか。
問題に「打ち負かされる」ことと、「打ち負かされない」ことの違いは、急いで解決しなければならないという時間的プレッシャーの中でのみ生じます。
困難にぶつかった時は、その問題と付き合っていく必要があります。長期間付き合うことができれば、問題に打ち負かされることはありません。なぜなら、問題と共生する方法を探し出すことができるからです。
怒りを覚えたら、自分が楽しいと思うことをする
――自分の感情はどのように管理していますか。
どんなプラスやマイナスの感情も心の中に空間を1つ作り、その感情を詳しく描写できるようになるまでそこに入れておきます。過度にプラスあるいはマイナスな気持ちも、時間をかけ、苦しくも楽しくもない境地に到達するまで付き合えばいいのです。
プラスの感情には困らせられることがあります。例えば1つのことに夢中になり過ぎると、他の人が反対した時に受け入れ難く感じます。いったん自分が正しいと思ったら、他人の意見を排除しがちになります。
マイナスの感情は、それを精神のマッサージだと思うようにしています。人にそこを押されると痛いのは、心の中のつかえがまだほぐれていない証拠です。
そんな時、私のやり方はとても簡単です。例えば、私の名を挙げているネットユーザーのコメントや意見で、パソコンをぶち壊したくなるような文字を見ることがあります。でも叩き壊すことはしません。パソコンは高価ですから。
こうした時は、聴いたことのない音楽をかけたり、飲んだことのない味のお茶を入れたりします。これはとても簡単です。2種類の茶葉を1杯のお湯に入れ、少し待つだけで、新しい組み合わせの味が出来上がります。それから気持ちが少し収まるのを待ち、それらの文字のことを考えながらお茶を飲み、初めての曲を聴くのです。
怒りを覚えたら、その感情がまだ心に引っかかっていても、自分が楽しいと思うことをすると、感情がシフトする。それがこの方法のコンセプトです。
それ以降、同じ文字を見たらすぐに「これはごぼう茶とミントティーを混ぜて飲んだ味だ」とか、「あの曲の一節だ」という具合に思い出します。するとすぐに怒りが愉快な気持ちに変わるのです。
この精神マッサージは、その日十分な睡眠を取るだけでよく効きます。目が覚めると脳内に新たに長期の記憶ができており、以降は誰が私に向けてその類の文字を書いても不快に思うことがなくなります。
そうなれば、コメントを残した人に対し、事実に即した対応ができるようになります。もし書き手の文字が誰かのコピーではなく個人の経験からのもので、しかもその人自身の一貫した立場と一致していたら、コメントの中の一部だけを選んで回答し、その他の部分は完全に見なかったことにします。
通常、その方法ですぐにネットユーザーと良い対話ができるようになります。私がいる社会創新実験中心(ソーシャルイノベーションラボ)にその人を招き、一緒に食事やおしゃべりをすることさえあります。
About Episode 2 : 天才児童
――子ども時代の家庭教育で、人生に最も大きな影響があったのはどんなことでしょう。
父からは、どんな権威も信じないように教わりました。母からは、個人的な感じ方でも、文字にすれば他人と共通の感情が生まれるという意義があることを教わりました。
――幼稚園と小学校は、合計で9カ所も通ったとのことですが、どうしてですか?
毎年転校していれば、夏休みの宿題をしなくてもいいからです(笑)。
学校はみんなを同じコースで競争させます。普通は高校の頃にはおそらく2つか3つのコースに分かれますが、やはりみんな自分と近くの人を比べるしかありません。学生は、コースを外れてもっと高いところ、あるいはもっと違う景色が楽しめるさまざまな別の場所へ行くことはできません。
ルートが固定されているから、勝者と敗者が存在するんです。でも、社会に出ると、そういう勝ち負けによってみんなの能力が規定されるわけではないと分かります。
幼稚園は3カ所、小学校は6カ所行ったからでしょうか、私にはそうしたコースは作られたもの、与えられたものに思えます。誰でも、最後に行く道は与えられたコースではなく、自分の命の赴く方向なのです。その道は、山あり谷ありかもしれません。曲がりくねっているかもしれません。誰でも、自分の行く道の上ではギフテッド(天から与えられた才能=天才)なのです。
誰もが他の人とは違います。
みんな同じというのはある種の幻想です。私はその幻想から早く覚めたというだけです。
――小中学校の教育がどのような方向に発展すれば、子ども時代のあなたは学びたいと思いますか。
現在、台湾の国公私立学校で行われている「教育実験」と、民間のホームスクールでの「実験教育」は、すでにシナジー(相乗効果)を生んでいます。今ではより自由な学習指導要領と学習方法があり、一般の公立学校でさえ、子ども時代の私のように1週間に3日間しか学校に通わない生徒でも問題ありません。
ほかにも、多くのホームスクール団体が用意したさまざまなプログラムは、いずれの選択も合法です。法律の後ろ盾があるので、私が子どもの頃にあってほしかった変化はすでに起こっていると言えます。
About Episode 3 : 独学少年
――家で独学するということは、自分1人で学ぶんですか。
小さい頃、私が独学を始めた時には、まだウィキペディアもなくて、オンラインの『プロジェクト・グーテンベルク』を読んでいました。すべて第1次世界大戦以前のパブリックドメインの本ばかりで、内容に共通しているのは、楽観的だということでした。
ただ、当時の時代背景は理解できませんでした。例えば、なぜダーウィンは旅に出たのか、とか。ですから後になって、知識というのは文字を読むだけではだめで、グループで研究することで、そうした知識を当時生んだ近代思想、哲学、歴史を知る必要があると分かりました。それで、家の近くにある大学へ聴講に行ったんです。独学する時は、友人がいればみんなで討論できます。ああ、そういうことなんだと思って、その後また本に戻れば分かりやすくなります。
自分で勉強することのメリットは、他の人に見つけられないものを見つけられる、ということです。これはとても重要で、そうでなければ付和雷同するだけになります。誰かが言ったことに同調するだけでは、自分がありません。でも、誰かとシェアできることも重要です。
大学の段階であれば、学習の重点はどの分野を勉強するかではなく、将来どんな問題を解決したいか、どっちへ行きたいかということです。たとえば、空にはもう名前のついた星座がたくさんあるけれど、今後どの方向へ行くかを考えさえすれば、そばにあるすべての星が材料になります。それをつなげれば、宇宙で唯一無二の、自分の星座になるんです。
――今後の実験教育で試してみたいことはありますか。
実験教育は高等教育に拡大してもよく、そうなればとても面白いと思います。今は文化や空間、世代を横断した学習モデルがあり、ミネルバ大学のように複数の都市にキャンパスを持つ実験大学では、特定の年齢の学生を募集するのではなく、同じ研究テーマに興味がある人たちを共同の学びに向けて募っています。そのため、年齢差が30歳から50歳あろうとも、若者とシルバー世代がクラスメートとなり、共に研究に従事しています。
コロナ禍の間に新しく身につけた習慣は、徒歩通勤
――新しいことを学ぶ時の秘訣は何でしょう。
「新しい習慣を作る」ことを習慣にすることです。たとえば外国語の学習で学ぶ言語の種類が多ければ多いほど、コツをつかめば学ぶのが容易になります。意識して新しい習慣を作ることができれば、こうしたこともどんどんうまくなっていきます。
ただ、普通は新しい習慣は一度に1つ作ればよく、いっぺんに多くの習慣を作ってはいけません。「禁断症状」が出て、なかなか成功しなくなるからです。
科学的な研究によると、新しい習慣を1つ作るには一般的に約2カ月かかります。難しいように思えても、決心して実行すれば、1年で6つの新しい習慣を作ることができます。
たとえば、コロナ禍の間、私は新しい習慣を1つ身に付けました。徒歩での通勤です。仕事用のパソコンをオフィスに置き、朝起きて仕事があれば、家から15分のオフィスまで歩いて行きます。退勤後はオフィスにパソコンを残し、歩いて家に帰ります。
歩いていると、私と話したい人から話し掛けられることもあります。そういった人と話すために、毎日少し時間に余裕を持たせました。そうすれば、今でも毎日多くの人と接することができ、人に遮られることを心配しながら急いで通勤することもありません。これが最近、かなり意識して身に付けた習慣です。
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