<玄瑞と伊之助の史料>
「花燃ゆ」文の夫が“初共演” 「幕末の岡山の動静知って」 きょうから県立博物館 /岡山
井上真央さん 花燃ゆ 文
至誠しせいにして動うごかざる者ものは、未いまだ之これ有あらざるなり


花燃ゆ 文 スケッチ a
( 花燃ゆ スケッチ )

花燃ゆ 文 スケッチ

NHKの大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公・杉文(吉田松陰の妹)の夫、久坂玄瑞(くさかげんずい)が備中松山藩(高梁市)重鎮の山田方谷(ほうこく)に送った手紙と、後の夫の小田村伊之助(小田素太郎)がひそかに岡山藩を訪れた時の面会記録が、22日から県立博物館(北区)で一緒に展示される。どちらも研究者には存在が知られている史料だが、ドラマがきっかけで“初共演”することになった。【小林一彦】

 玄瑞(1840~64)の手紙は1861年5月に書かれた。「安政の大獄」で処刑された玄瑞の師・松陰の遺体が江戸・小塚原回向院に葬られたことに対し、「志士を盗賊弑逆之徒と混淆」(志士を盗賊や主君の殺害者と一緒にしている)と憤慨。改葬のための周旋を「奉願上候(ねがいあげたてまつりそうろう)」と繰り返している。

 当時の松山藩主・板倉勝静(かつきよ)は幕府の寺社奉行を務めたが、安政の大獄に反対し、罷免された。方谷(1805~77)は勝静の顧問役。玄瑞は58年に松山藩を訪れるなど、方谷と面識があった。勝静は62年に老中となり、松陰の遺体は翌年、現在の松陰神社(東京・世田谷区)に改葬された。

 伊之助(1829~1912)の記録は、岡山藩で内々の対外交渉を担当していた津田弘道(1834~87)が残した1865年7月27日の覚書。当時の岡山藩主は、後の将軍・徳川慶喜の実弟で尊王攘夷(じょうい)論者の池田茂政(もちまさ)。幕府との対立が激化した長州はたびたび密使を送って意見を求めていた。

 岡山藩は幕府から「長州と組もうとしているのでは」と疑われており、伊之助は「御互之為に」かかわらない方が良いのだが、今回は「大事件ニ付、其可否を貴藩ニ質し」と助言を求めたという。大事件とは長州藩の藩主親子に幕府が大坂出頭を命令したことを指している。

 このほか、桂小五郎が方谷に宛てた手紙(63年)も展示される。同館では「ドラマの役者さんたちの顔を思い浮かべながら幕末の動乱期に岡山が果たした役割に興味を持っていただけたら」と話している。

 同館の特別陳列「岡山を訪れた勤王の志士」は5月31日まで。問い合わせは同館(086・272・1149)。

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至誠しせいにして動うごかざる者ものは、未いまだ之これ有あらざるなり

〔出典〕 『孟子』離婁上
〔解釈〕 こちらがこの上もない誠の心を尽くしても、感動しなかったという人にはいまだあったためしがない。誠を尽くせば、人は必ず心動かされるということ。


孟子曰、居下位而不獲於上、民不可得而治也。獲於上有道。不信於友、弗獲於上矣。信於友有道。事親弗悅、弗信於友矣。悅親有道。反身不誠、不悅於親矣。誠身有道。不明乎善、不誠其身矣。

孟子もうし曰いわく、下位かいに居いて、上かみに獲えられざれば、民たみ得えて治おさむ可べからざるなり。上かみに獲えらるるに道みち有あり。友ともに信しんぜられざれば、上かみに獲えられず。友ともに信しんぜらるるに道みち有あり。親おやに事つかえて悦よろこばれざれば、友ともに信しんぜられず。親おやに悦よろこばるるに道みち有あり。身みに反かえりみて誠まことならざれば、親おやに悦よろこばれず。身みを誠まことにするに道みち有あり。善ぜんに明あきらかならざれば、其その身みを誠まことにせず。

◦下位 … 家来の地位。
◦不獲 … 信任されない。
◦上 … 君主。
◦民不可得而治也 … 「民たみ得えて治おさむ可べからざるなり」、または「民たみ得えて治おさむ可べからず」と読む。人民を治めてゆくことなどとても出来ない。「民」は「治」の後にくるのが通常であるが、ここでは「民」を強調するため、前に出している。
◦道 … 方法。
◦弗 … 「~ず」と読み、「~しない」と訳す。「不」と同じ。
◦事 … つかえる。「仕」と同じ。
◦反身 … わが身によく反省してみて。
◦誠 … まごころ。誠実。誠意。
◦明乎善 … 是非善悪を識別すること。「乎」は前置詞。

是故誠者、天之道也。思誠者、人之道也。至誠而不動者、未之有也。不誠、未有能動者也。

是この故ゆえに誠まことは、天てんの道みちなり。誠まことを思おもうは、人ひとの道みちなり。至誠しせいにして動うごかざる者ものは、未いまだ之これ有あらざるなり。誠まことならずして、未いまだ能よく動うごかす者ものは有あらざるなり、と。

◦是故 … 「是この故ゆえに」と読む。それゆえ。それだから。こういうわけで。「故ゆえに」と同じ。
◦思誠 … 誠をわが身に実現しようと思い、努力すること。
◦至誠 … この上なく誠実なこと。まごころ。
◦不動者 … 感動しない人。
◦未之有也 … まだあったためしがない。
◦不誠 … 「誠まことならずして」と読む。誠意を尽くさなくても。
◦能動者 … 「能よく動うごかす者ものは」と読む。人を感動させることのできる人は。

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