「新大窯」挑戦 森陶岳さんに聞く 岡山

昨年1年間をかけて備前焼史上空前の「新大窯」(全長85メートル、幅6メートル)に挑んだ岡山県重要無形文化財保持者の森陶岳さん(78)=瀬戸内市=が、その成果を披露する作品展を2月2日から岡山シティミュージアム(岡山市北区駅元町)で開く。約40年もの追求の果てにたどり着いた巨大窯は何をもたらしたのか。開幕を前に森さんに聞いた。
 ?備前焼最大級である「五石甕(がめ)」(高さ1・45メートル、胴径1・3メートル)を中心に壺(つぼ)、水指、花入など約50点が並ぶ。大窯での焼成が生んだ作品の魅力は。
 オレンジ色に染まった焼け肌、器面に溶けた灰が白く発色した白胡麻(ごま)、全面に広がった緋色(ひいろ)…。私の50年以上の陶歴を通しても出合ったことのない焼けであり、神秘的な力を感じている。そして何より「五石甕」が放つ力感。私があこがれ、求め続けてきた古備前のエネルギーに比肩できると確信している。今回の焼成では、数年前から検証に取り組んでいた特定の温度帯における土の組成の変化も確認できた。土を焼き締める備前焼ならではの迫力を感じてもらえると思う。
 ?1970年代から全長46メートルの「相生大窯」(兵庫県相生市)、同53メートルの「寒風大窯」(瀬戸内市牛窓町)と、2基の大窯を手掛けてきた。今回の新大窯は何が違ったのか。
 「全てが違う」としか言いようがない。窯焚(だ)きに着手してすぐにこれまでのやり方は通用しないことを痛感した。強烈な火の吸い込みや刻一刻と変化する炎の流れ、不規則な温度の上がり方など、107日間にわたった焼成では、あらゆる要素がこちらの思惑を超え、窯自体が意思を持って炎を動かしている印象すら受けた。新大窯の巨大な空間と数千トンの薪(まき)を費やした膨大な熱量が生んだものであり、明治以降の窯の個人化で備前焼が失ったものでもあったのだと思う。
 ?その成果を披露する展覧会への思いは。
 相生大窯に始まる約40年のプロジェクトは、古備前の内容に挑む“実験”であり、その締めくくりが今回の窯焚きだ。展覧会で並べる作品を見て、先人たちの知恵と技術の結晶ともいえる大窯の力を実感してほしい。
 
 
 
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 「森陶岳大窯展」は2月24日まで。月曜休館。7、14、21日の午後1時と3時から森さんの講演が行われる。
 森陶岳氏(もり・とうがく)
 本名・才蔵。備前市伊部の備前焼窯元の長男に生まれる。岡山大教育学部特設美術科卒。兵庫県相生市で中学校の美術教師を務め、1962年から作陶生活に入る。66年に日本工芸会正会員となり、69年に日本陶磁協会賞受賞。96年に岡山県重要無形文化財保持者に認定された。