映画「犬に名前をつける日」公開 岡山

 人間に見放された犬や猫の殺処分の現実と、彼らを救おうとする人々を追った映画「犬に名前をつける日」が、岡山市北区丸の内、シネマ・クレール丸の内で公開されている。来岡した山田あかね監督(56)は「現状を知り、何ができるのか考えてみてほしい」と語り、人とペットの関係を問い掛ける。2月5日まで。
 愛犬を病気で亡くした傷心のテレビディレクター久野かなみ(小林聡美)は、大先輩の映画監督に励まされ、「犬の命」をテーマに映画を作ることを決める。そして飼い主のいない犬や猫が自治体の施設に収容され、引き取り手が現れないと次々と殺処分されている現場を取材して大きな衝撃を受ける。
 久野のモデルは山田監督自身。愛犬を亡くした2010年から興味の赴くままにカメラを回す中で、処分されようとする犬や猫の新たな飼い主を探すボランティアの人たちに出会い、追い掛け始めた。彼らを通じて、東京電力福島第1原発事故で放置された動物の救助活動などにも同行。撮影は4年間で200時間を超えた。
 「私は単なる犬好きで、知らないことばかりだった。熱心なボランティアと自分を比べてしまい、何ができるのか日々悩んだ」と振り返る。そんな等身大の自分を描けば、重いテーマでも幅広く興味を持ってもらえるのではと考え、ドキュメンタリー映像に取材者側のドラマを加えた。久野役の小林は、台本なしで現場を“取材”。そこで生まれた素朴な戸惑いや驚きの表情が共感を誘う。
 捨てられた犬や猫を引き取り、高齢者と穏やかに暮らす老人ホームから、狭く薄汚れた飼育施設で人気犬種を大量に繁殖させる業者まで、多様な姿を丹念な取材で伝える。「人と犬の社会は助け合いの形で始まったが、お金が介在するようになってゆがんでしまった」と嘆く。
 環境省によると、全国で殺処分された犬と猫は、10年の約20万匹から14年約10万匹に半減。山田監督は、正当な理由がなければ自治体が引き取りを拒否できるようになった動物愛護管理法の改正(13年9月施行)や、犬猫を救おうとする人々の努力で少しずつ改善しているとみる。物語終盤では、撮影しながら、自分ができることを問い続けてきた久野も、新たな一歩を踏み出す。
 「いたずらに殺すことは賛同できないが、殺処分せざるを得ない時もある。人と犬の関係に正解はない、そうとしか言えない」と山田監督。慎重に言葉を選ぶ姿に苦悩がにじむが、「海外には先進事例も多い。取材しながら考えていきたい」と前を向く。