健保の健康づくり  過度な特典抑制 奨励から修正 厚労省

病気予防や健康づくりに取り組む健康保険の加入者に特典を与える企業や自治体などが増えていることに対し、厚生労働省が「過度にならないよう留意を」と慎重な対応を求める指針を今月まとめたことが分かった。厚労省はこれまで、将来の医療費抑制につながるとして特典を奨励し、今年4月の国民健康保険法改正でも支援を促したが、病院に行かない人に現金を給付するといった対策には一定の歯止めをかけた形だ。

 特典を利用した健康づくりへの支援は、2013年12月成立の社会保障制度改革プログラム法に盛り込まれ、今年4月施行の改正国民健康保険法では、自助努力の支援が保険者(企業の健康保険組合や国民健康保険を運営する市町村など)の努力義務とされた。

 こうした国の動きに合わせて、検診の受診や健康教室への参加、ウオーキング、禁煙をした加入者らに特典を付与する保険者が急増。厚労省の昨年9月の調査では、約3000組合の約13%(384組合)が取り入れていた。健康グッズなどの商品提供が209組合で最も多く、地域限定の商品券やポイントの贈呈(120組合)、保養所の利用補助(58組合)が続く。

 例えば、外資系の製薬大手「グラクソ・スミスクライン」では、健康診断の結果が良好だとポイントがもらえ、ためると米や肉、家電などと交換できる制度を導入。14年度は460万円を支出した。

 一方、調査では、現金を給付する保険者も16あり、ある企業は食生活改善プログラムの受講などを「自己研さん」の一環と捉えて給与に上乗せしていた。こうした取り組みも、厚労省は保険料への支援として認めているが、指針では「インセンティブ(特典)の提供自体が目的化することを避けることが必要」と指摘。金銭的価値が高すぎると不公平感が高まる恐れも挙げ、現金給付については慎重な検討を求めた。特典としては▽体重計や健康的な食品の提供▽表彰▽高額でない商品券や旅行券??などを例示した。

 ◇現金給付自治体、戸惑いつつ改良

 「現金給付による健康づくり推進」に熱心に取り組んできたのが、岡山県総社市だ。2014年度から、生活習慣病予防の特定健診(メタボ健診)を受け、全員が1年間医療機関を受診していない国保加入世帯に、奨励金として1万円をキャッシュバックしている。14年度は70世帯、15年度は82世帯が対象になった。

 市は14年11月、先進事例を表彰する厚生労働省の「健康寿命をのばそう!アワード」の優良賞にも選ばれ、特定健診の受診率が上昇する効果もあった。

 だが、国会などで「現金ほしさに病院を受診しなくなる恐れがある」などの批判が出ると、厚労省は軌道を修正。指針で現金給付は推奨されなかった。

 市の担当者は「指針を真摯(しんし)に受け止める」としつつ「国に褒めてもらったこともあったのに……」と戸惑いを隠さない。今後は健康診断で異常がなかったことなどを条件に加えて受診抑制が起きないよう配慮しながら、給付は続ける意向という。