岡山「人食い用水路?」 用水路転落 防止カルテ


◇消防出動基に県収集

 県内で多発する用水路などへの転落事故を防ごうと、県は危険箇所ごとに特徴を記したカルテの作成に乗り出す。今後1年かけて各自治体を通じてカルテを収集し、対策箇所の優先順位などを示したガイドライン(手引き)を作成。それを基により有効な転落事故防止対策を進めていく方針だ。

 県警交通企画課によると、2013~15年に県内で発生した転落死亡事故は31件。一方で、同期間に消防が出動した用水路や田んぼなどへの転落事故件数は1143件、うち死亡したケースは79件にのぼり、大きな開きがある。県警は自転車やバイクで転落したケースを交通事故として現場を調査するが、歩行者の転落事故は調査の対象外で、県道路建設課は「被害の全体像が把握しきれていない」という。

 県は、各自治体が事故現場ごとにカルテを作成することを決定。今後、消防は用水路転落の救助事案について、出動情報を道路管理者の自治体に連絡する。それぞれ担当課が現地調査を行い、地図や写真を複数添付し、事故の発生状況、用水路の幅や深さ、水深などの情報も盛り込んでいく。

 ◇安全柵や照明 優先順位付け対策手引き

 県は各自治体からカルテを集め、来秋から本格的に分析。死亡や重体事故につながる可能性を検討して優先順位をつける一方、特徴に応じて安全柵や照明の設置といった対策を示すガイドラインも作成し、自治体と共有する。

4月に転落死亡事故が発生した用水路。事故後に安全柵が設置された


 県警が把握している用水路の危険箇所は県南部を中心に533か所あり、転落防止対策が済んでいるのは243か所(6月30日現在)。自治体、警察、消防の担当者らが集まる「第2回用水路等転落事故防止対策検討会議」(8月、岡山市)では、岡山市が今年度一般会計当初予算で転落事故防止対策に2億3600万円を確保するなどし、対策済みの箇所が昨年末より71か所増えたことが報告された。一方で対策の進捗しんちょく状況は市町村によって差があることも指摘された。

 県道路建設課の中山基隆課長は「危険な用水路の対策に優先的に取り組み、死亡事故を防げるようガイドラインの作成を急ぎたい」としている。