岡山 「瀬戸内国際芸術祭2016」(島と育むアート、終章へ
瀬戸内国際芸術祭 2016 ss


爽やかな青空に、白い雲がゆっくりと流れる。あぜ道には風に揺れるコスモス。厳しかった残暑はいつの間にか遠ざかり、瀬戸内の島々は実りと収穫の季節を迎えていた。「瀬戸内国際芸術祭2016」(香川県などでつくる実行委主催)は春・夏会期を経て、終章となる秋会期が8日開幕する。新たに本島、高見島、粟島、伊吹島(香川県)の4島が加わり、11島13会場で11月6日までの30日間、さまざまな展示や催しが繰り広げられる。 岡山市唯一の有人島・犬島では、ガーデンプランナー橋詰敦夫さん(57)と生花デザイナー木咲豊さん(39)によるユニット「明るい部屋」が、世界的な建築家妹島和世さんと手掛ける「犬島くらしの植物園」が公開される。 今年3月、橋詰さんと木咲さんは東京から犬島に移住した。「単に美しい植物を眺めるのではなく、これからの暮らし方を考える場にしたい」と話す2人は、島と共に歩む植物園を目指して準備を進めてきた。 企業の研究に使われていた温室と荒れ放題だった約4500平方メートルの空き地を整備し、木や花を育ててきた。今後は来場者とビオトープや果樹園、ハーブ園などを造り、生ごみの堆肥化や排水の浄化といったエネルギー循環を進める計画だ。 2人が初めて犬島を訪れたのは2010年。第1回の芸術祭で、妹島さんらによる「家プロジェクト」の庭造りに携わった。土を掘れば昆虫の幼虫が顔を出し、それを狙って鳥が飛ぶ。島のあちこちをカニが歩き、チョウが舞った。橋詰さんは「東京での日々が疑似的に思えるほど、生き物の存在感に圧倒された」と振り返る。 「島民の生活にも多くを学んだ」と木咲さん。ドクダミを煎じて石けんを作り、アロエを食べたり塗ったりして薬に使う。知識として知っていた植物の力が、島では日常の中に生きていた。「これらの驚きや感動を、来場者と共有したい」と期待する。 橋詰さんは「日本の近代化、高度経済成長の過程で、犬島は多くの矛盾を抱えた」とも話す。明治、大正期に稼働した銅精錬所の煙害で植生は破壊され、戦後の発展からも取り残され、数千人いた住人は今や50人程だ。「ここ犬島で真に豊かな暮らしを問うことは、大きな意味があるのでは」 過疎・高齢化が進む瀬戸内の島々にアートの種をまき、希望と笑顔の花を咲かせようとする瀬戸内国際芸術祭。その理念をくむ取り組みが、また一つ、動き出す。

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岡山 瀬戸芸で玉野産食材「のり弁」を


「瀬戸内国際芸術祭2016」秋会期(8日-11月6日)に玉野市の宇野港会場で販売するオリジナル弁当「うのののり弁」が完成した。野菜、穀物、果物は全て玉野産を使用。土、日曜限定販売(22日除く)で、関係者は「玉野を感じてもらえる弁当。宇野港会場で芸術と食欲の秋を満喫してほしい」と呼び掛ける。 瀬戸内海エリアの食材の魅力をPRする瀬戸芸食プロジェクトの一環で、春会期(3月20日-4月17日)に続いて企画。食プロジェクトを支える人材育成のための「瀬戸内『食』のフラム塾」(15年7月-16年1月)を受講したかき氷店店長武田万実さん(39)=岡山市南区=と、フードコーディネーターのソウダルアさん=東京=が食材を選び、メニューを考案した。 クリと大豆のまぜご飯の上に胸上産焼きのりを敷き、モチキビをまぶした魚のフライ、シイタケと千両ナス、レンコンのきんぴら、柿の寒天を盛り付け。フライの魚は瀬戸内海産のタイやアジ、サバなど日替わりで、地元住民による漬物入りの特製タルタルソースをかける。宇野港会場のインフォメーションセンターで1日50食を販売する予定。800円。 調理や盛り付けを手伝う築港婦人会のメンバー、食材の生産者、観光関係者ら12人が5日、宇野港のにぎわい創出拠点施設で試食。築港婦人会の坂本セイ子会長(77)=玉野市=は「季節感があり、彩りの良い弁当に仕上がっている。販売日には、最高の味になるよう段取りよく調理したい」、焼きのりを生産する富永美保さん(29)=同市=は「身近な食材に一手間かけたメニューで、とてもおいしい」と話した。 武田さんは「玉野の農産物の魅力が伝わる出来栄え。宇野港でも島会場でも手軽に食べられ、瀬戸芸の思い出の一つになるはず」と語った。
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