岡山芸術交流の関連イベント「哲学カフェ」 「自由と経済開発」テーマに対話
岡山市の「cafe moyau(モヤウ)」(岡山市北区出石町1)で11月15日、哲学カフェ「テツドク!(哲読)」が開催された。
同イベントは、岡山市内で開催中の「岡山芸術交流2016パブリックプログラム」の一つとして行われた。哲学カフェは、あるテーマについて参加者らが自由に対話できるオープンな場。1992年にパリのカフェ・デ・ファールで生まれ、日本でも1999年ごろから全国各地で行われている。ファシリテータ―は、「カフェフィロ」副代表の松川絵里さんが務めた。
今回は「岡山芸術交流2016」のテーマ「開発」にちなんで、アジア初のノーベル経済学賞を受賞した経済学者アマルティア・センの著書「自由と経済開発(Development As Freedom)」が題材。本の内容を要約した資料を基に、自分自身がどのように感じたかを自由に議論し合う場となった。
参加者は幅広い世代の15人。「自由とは何か」や「経済成長によって本当の幸せはつかめるのか」などについて議論された。参加者からは「私が思っていた自由と他のみんなが思っている自由が違っていた。今までの『開発』の考え方で世界は本当に変わるのか。経済を考えるとき、数字だけではなく道徳的な考えを取り入れることが必要ではないか」と意見が出された。
松川さんは「参加者が自分の身の回りの出来事に置き換えて発言してくれ、予想外に面白い議論となった。対話の中で新しい気付きや疑問が生まれたならうれしい」と話す。
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経済学者アマルティア・センの著書「自由と経済開発(Development As Freedom)」
序章 自由としての開発
第1章 自由についての見解
第2章 開発の目的と手段
第3章 自由と正義の基礎
第4章 潜在能力の欠如としての貧困
第5章 市場、国家、社会的機会
第6章 民主主義の重要性
第7章 飢饉、その他の危機
第8章 女性の能動的な力と社会変化
第9章 人口、食料、自由
第10章 文化と人権
第11章 社会的選択と個人の行動
第12章 社会的目標としての個人の自由
ノーベル賞受賞後に一般向けに書き下ろされた『自由と経済開発』である。所得が増えること、餓えの脅威がなくなること、字が読めるようになること、政治プロセスに参加すること、男女差別が弱まること---これら様々な側面の「開発」ないし「発展」とは、結局のところ実質的な「自由」を広げるからこそ価値があるのだ。センの経済学のエッセンスというべきこのメッセージが、本書では分かりやすく説明されている。インドを直接扱ったものではないが、具体例の多くがインドや南アジアであるから、インド社会を理解する上で示唆に富む。訳者が学者でないためか読みやすい平易な日本語になっているのはよいが、注の説明に首を傾げるところや既存研究をきちんと参照していない点が多少見られる。邦訳タイトルも、センのいう「開発」の意味の広さを考えるとミスリーディングな気がする。
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