岡山大  次世代がん治療へ新プロジェクト (インバウンド(海外からの誘客)につながる患者の受け入れを)



岡山大は「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」と呼ばれる新たながん放射線治療の確立に向けたプロジェクトを進めている。4月には拠点となる「中性子医療研究センター」を学内に設置。将来は新施設を学外に建てる構想もあり、BNCTで世界をリードできる体制づくりを目指す。 BNCTはホウ素薬剤を体内に注入して中性子(放射線の一種)を照射し、ホウ素を取り込んだがん細胞のみを破壊する。薬剤と中性子の発生装置(加速器)の開発が実用化の課題で、岡山大では大学院医歯薬学総合研究科の松井秀樹教授(細胞生理学)らのグループが2009年から薬剤開発に着手。加速器の研究も名古屋大と共同で行っている。16年10月には放射線治療の国際規制とガイドラインの策定を担う国際原子力機関(IAEA)との間で関連の研究や人材育成で連携する協定を結んだ。 新たな研究センター設置は、国内外の大学とも連携しながら取り組みを加速させる狙い。薬剤の開発と動態の解析▽加速器▽国際連携?など5部門を設け、世界的な研究者を招聘(しょうへい)するなどして30人規模(兼任含む)でスタートする。当面は鹿田キャンパス(岡山市北区鹿田町)に置く。 今後5年をめどにホウ素薬剤、加速器の完成を目指す。IAEAのガイドライン策定に向けた研究などにも力を入れる。インバウンド(海外からの誘客)につながる患者の受け入れを視野に、治療と研究、教育を行う新施設の整備も岡山大として検討する。 研究センターの立ち上げに携わる同大研究推進産学官連携機構の市川康明特任教授は「センターが中心となり、世界標準となる治療法を確立したい。国内外から優秀な人材を集め、チームをまとめ上げたい」と話している。