宝木獲得「福分かち合いたい」 岡山 西大寺観音院

西大寺観音院(岡山市東区西大寺中)で18日夜に開かれた裸祭り「西大寺会陽」で、福をもたらすといわれる宝木(しんぎ)を獲得したのは、公務員浮田昌宏さん(41)=岡山市東区=ら15人の高原グループと、公務員小倉晴生さん(37)=同=ら29人の林グループ。「夢のよう。福を分かち合いたい」と、約1万人(主催者発表)による争奪戦を経て宝木を手にした喜びに顔を上気させた。 初の獲得を果たした高原グループ。午後10時40分ごろ、会場近くの検分所となる岡山商工会議所西大寺支所に、浮田さんと会社員浮田朋成さん(41)=同、会社員光本友彦さん(41)=同=の幼なじみ3人組が到着した。 つかみ合いになっていた宝木を浮田朋成さんが思い切り引き抜き、体勢を低くしたまま後ろの浮田昌宏さん、光本さんへと渡し外に持ち出した。「仲間を信じ無我夢中で運んだ。3人で組んで7年目。夢がかなって感無量」と浮田朋成さん。浮田昌宏さんは「最後まで諦めなかったのが勝因」、光本さんは「グループ全員の力で獲得できた」と語った。 林グループは、2年連続12回目の福男。午後11時20分ごろ、小倉さんら3人が他のメンバーに担がれて検分所に現れ「わっしょい」と喜びを爆発させた。 小倉さんは「宝木を手にした瞬間は気持ちが舞い上がったが、仲間に『落ち着け』と言われ冷静に動けた」と振り返った。相撲部で鍛えた約140キロの体でグループに貢献した東洋大1年重松龍大さん(19)=岡山市東区=は「最高の気分。これからも日々精進したい」と興奮が冷めやらぬ様子。 公務員木村慎太郎さん(37)=倉敷市=は家族や仲間への感謝を口にし「みんなで福を分け合い、笑顔が絶えない年に」と願った。

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岡山 <西大寺会陽>裸の熱戦、福つかむ 高原グループ「練習の成果出た」 林グループ、2年連続に「感動」



東区の西大寺観音院で、締め込み姿の約1万人の裸衆が2本の宝木(しんぎ)争奪戦を繰り広げた18日夜の西大寺会陽(えよう)。熱戦の末、宝木を獲得した2グループ6人の「福男」は、誇らしい笑顔で観音院近くの宝木検分所に納め、1年の福を授かった。

 1組目の福男は「高原グループ」所属の東区西大寺新、会社員、光本友彦さん(41)▽東区北幸田、会社員、浮田朋成さん(41)▽東区正儀、公務員、浮田昌宏さん(41)。宝木をつかんだ浮田朋成さんは「渦の中で手にかかったので思い切り引っ張った。まだ実感は湧かないが、日ごろの練習の成果が出てうれしい」と話した。

 もう1組は「林グループ」所属の東京都文京区、東洋大法学部1年、重松龍大さん(19)▽東区楢原、消防士、小倉晴生さん(37)▽倉敷市西中新田、同、木村慎太郎さん(37)。林グループは2年連続で宝木を獲得した。小倉さんは「皆さんのおかげで宝木を頂戴できた。去年亡くなった父親にこの感動を伝えたい」と喜びを語った。

 ◇新聞社・記者も初体験

 西大寺会陽には新聞社 岡山支局から記者(26)が参加した。寒空の下、裸の男たちの群れに飛び込み、体をぶつけ合いながら宝木を狙った体験をつづった。

 ◇声援に感謝「来年こそ」

 初めての締め込み。足袋を履いて、さあ出陣だ。仲間と肩を組み、「わっしょい、わっしょい」と大声で寒さを吹き飛ばす。沿道の見物客の声援に励まされる。

 境内に入り、心身を清める「垢離取(こりとり)場」へ。水は痛いほどの冷たさだが、気合が入る。本堂は既に裸の男たちであふれかえっていた。無心で石段を駆け上がり突入。大床の上は男たちの汗や酒の入り交じった強烈な匂いと、ものすごい熱気。「押せ押せ−!」。前後左右から押される。つぶされそうになり身動きが取れない。両手を上げるだけで精いっぱい。

 午後10時、照明が消え宝木投下。「福男」になるため夢中で腕を伸ばす。何かが当たる感覚すらない。周囲から「どこだ、どこだ」の声。裸の渦に飛び込もうとするが、肌の壁に跳ね返される。やがて「宝木は境内を抜けた」とアナウンスが響いた。

 何もできずに祭りは終わってしまった。無力さが残ったが、「来年こそは」と、一つ楽しみが増えた。

 ◇女会陽には30人

 「女会陽」には約30人が参加した。白装束姿の女性たちは2列になって、「六根清浄」を唱えながら境内を3周。水ごりをし、本堂と牛玉所殿(ごおうしょでん)にお参りをした。
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岡山で西大寺会陽 まわし姿の男性約1万人がぶつかり合う

岡山市の西大寺(岡山市東区西大寺中3)で2月18日、西大寺会陽(えよう)が行われた。

 本堂に押し寄せる約1万人の男性たち

 夜10時、まわし姿の男性約1万人が、本堂の御福窓から住職が投げ入れる2本の宝木(しんぎ)を取り合う。無事に宝木を持って出られた人が今年の福男となる。参加者はまわし姿であることから「裸祭り」と呼ばれている。昨年3月、国の重要無形民俗文化財に指定されている。

 同寺によれば、500年以上前の室町時代、旧暦の1月14日に行われていた修正会(しょしゅうえ)で守護札を配っていた。同札をもらうと福を授かるといわれ、取り合いになるほどだった。多くの人が詰め掛けるようになり、札は木でできた宝木に変わり、体の自由を得るために裸になったという。1962(昭和37)年からは2月の第3土曜に開催されるようになった。

 同祭りは19日前に安全祈願を行い、宝木を削る道具を磨くところから始まる。14日間にわたり10人以上の僧侶がお祈りを繰り返した後、当日を迎える。当日、本堂の様子を動画でライブ配信した。

 参加者は、高校生、大学生、企業、会陽のためのグループ。外国人参加者も増え続けている。
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