岡山県内自治体、保育士確保へ本腰

 認可保育所などに入れない待機児童の増加が社会問題となる中、岡山県内自治体が保育士の確保や処遇改善に本腰を入れだした。保育士不足は待機児童が減らない要因の一つとされ、県は資格を持ちながら働いていない「潜在保育士」と人手不足に悩む保育所の人材マッチングをスタート。独自に給与を上乗せする自治体も相次いでいる。 県は5月22日、県庁内に「保育士・保育所支援センター」を開設した。専属職員が電話や対面で潜在保育士の就労相談に応じ、市町村などと連携して希望に沿った保育所を紹介。就業中の保育士の悩み相談にも対応し、離職防止を図る。 県内の潜在保育士は国の推計で1万3690人(2013年)と保育士資格を持つ人の約6割に上る。県子ども未来課は「労働時間や勤務エリアなど綿密にマッチングを図り、1人でも多くの復職を手伝いたい」とする。 潜在保育士対策では、県社会福祉協議会も復職準備を支援する貸し付け(上限40万円)を昨年12月に始めた。転居費や最近の保育事情を学ぶための研修費に活用でき、県内保育所などで2年働けば返済も免除される。 待機児童が全国ワースト2位だった昨年を上回り、過去最多の849人(4月1日時点)となった岡山市。私立認可保育所の保育士の給与を2%(月約6千円)引き上げる補助制度を本年度創設した。一定の技能を持つ保育士には、さらに月最大4万円(半分は国補助)を上乗せする。 国の16年調査では、保育士の平均月給(賞与や残業代除く)は約21万6千円と全産業平均を約9万円下回る。とりわけ私立の給与水準が低いとされ、同市保育・幼児教育課は「給与面の処遇を改善することで保育士を確保し、施設の定員増につなげたい」と説明する。 総社市は本年度、市内の私立認可保育所で働く保育士らに1人当たり一律で年2万円、早島町も同3万円を支給することを決めた。 一方、市立保育所に勤める非正規雇用の保育士らに対し、奨学金の返済月額の半分(上限1万円)を補助する制度を本年度設けたのは真庭市。奨学金は種類を問わず、最長で10年。「中山間地は都市部と比べて人材確保が難しい。勤務地の候補にしてもらう理由の一つになれば」(同市子育て支援課)と期待を込める。 こうした動きに対し保育の現場からは、子育て環境の地域間格差が広がることを懸念する声も聞かれる。県内外で認可保育所を運営する社会福祉法人理事長は「給与面の支援はありがたいが、保育士の確保競争は全国的にも激しくなっている。県内でも待遇の良い市町村に保育士が集まり、そうでないところでは人材流出が進む二極化が進みかねない」と漏らす。 県立大保健福祉学部の佐藤和順教授(幼児教育・保育)は「就職後3年以内に離職する保育士は4分の3に上るとのデータもあり、まずは離職者を減らすことが重要。それには給与面だけでなく、業務効率化で一人一人の負担を軽くし、休日を取りやすくするといった労働環境の改善が欠かせない」と指摘する。 待機児童 認可保育所や認定こども園などに入れる条件を満たしながら、定員超過などで利用できない子ども。県内認可保育所では、2014年度まで30〜90人で推移していたが、保護者が求職中の場合も待機児童に含めるよう定義が見直され、15年度は393人に急増。16年10月時点では794人に上る。