岡山県内で「認知症カフェ」急増

 認知症の人や介護者が交流する「認知症カフェ」が岡山県内で急増している。現在、少なくとも80カ所以上あり、この1年ほどで倍増した。認知症の人たちの安らぎの場であったり、認知症への理解を広げる拠点としての役割が期待されているが、地域への周知や運営方針に悩むカフェも少なくない。 認知症カフェは、お茶を飲んで介護の悩みを話し合ったり、当事者がゲームや歌を楽しんだりして過ごす。日中の数時間を充てるのが一般的で、常にオープンしている所もあれば、週1度、隔週など開催頻度はまちまち。本人と家族の安らぎ、認知症に気付いていない人の早期発見、住民への啓発など、さまざまな機能が求められている。 県の調査では、昨年3月末時点で県内の全27市町村のうち14市町に44のカフェがあったが、今年1月末には17市町の83カ所に拡大。その後も瀬戸内市に開設されるなど、さらに増える見込みだ。 ◇ 一方、カフェの歴史はまだ浅く、地域への周知はあまり進んでいない。 仲間とともに昨年6月から岡山市北区平野で月に1度カフェを開いている後藤和美さんは「ちらしを自宅に届けてPRしているが、来訪者がゼロの日も何度かあった。介護保険のデイサービスと混同している人もいるようだ」と話す。 週に1度自宅を開放している岡山市北区下中野の中尾清美さんも「来るのは毎回1人か2人。どうすればカフェの存在を知ってもらえるだろうか」と言う。 利用が伸び悩む背景には、認知症であることを周囲に知られたくないという当事者、家族が少なくないという事情もあるようだ。 2015年1月から笠岡市でカフェの運営に携わる高橋望さんは「『近くには通いにくい』と言ってわざわざ福山市や倉敷市などから車で来る人もいる」と本人と家族の心情を思いやる。 行政側の運営も試行錯誤が続く。高梁市は認知症への理解を深めてもらうため、来訪者を認知症の人に特化しないカフェを市内9カ所に設けている。「元気な高齢者の集いの場になっているカフェもある。どういうやり方が最適か、答えは出ていない」と担当者。 ◇ より良いカフェの在り方を模索しようと、岡山、倉敷市などは運営者らが悩みや課題を話し合う機会を17年度中に設ける予定という。 自ら津山市内で認知症カフェを開いている美作大の小坂田稔教授(地域福祉論)は「行政が各カフェの特徴をきめ細かく広報することが何よりも重要。開設を民間任せにしている自治体も少なくないが、初期投資の経費を補助するなど、認知症の人を支えたいという志のある住民たちが開設しやすい制度を整えてほしい」と話す。