岡山県内3シネコン客層すみ分け ( イオンシネマ岡山 VS MOVIX倉敷 VS TOHOシネマズ岡南 )



 JR岡山駅前にイオンシネマ岡山(岡山市北区下石井)が開業し、岡山県内のシネマコンプレックス(シネコン、複合型映画館)が3館体制となって今年で3年。いずれも多数のスクリーンを持つ大型館だが、立地条件により若者、家族連れ、中高年と主な客層の“すみ分け”が進んでいる。映画人口が伸び悩み、パイの奪い合いが続く中、それぞれの“お得意さま”を取り込もうと各館は誘客策に工夫を重ねている。 若者でにぎわうイオンシネマ岡山。アニメや人気小説が原作の実写版など話題作がめじろ押しの夏休みとあって、終日ロビーは混み合う。同館は交通アクセスの良さや、イオンモール岡山に入居していることから、“主力”は自家用車や免許を持たない10〜20代。岡山市北区の大学3年女子(21)は「買い物もできるし、電車通学の友人との待ち合わせに便利」と話す。 「若者向けの作品は学校帰りに合わせ午後4、5時から上映するなど客層を意識している」と、青井健彦総支配人。公式ツイッターで公開作品のラインアップやキャストの舞台あいさつの予定などをつぶやいたりして、SNS(会員制交流サイト)を駆使する若年層やアニメファンにアピールしている。パイの奪い合い  全国の映画興行収入は、シネコンの登場で1990年代から増加し、2001年に2千億円を達成。その後は3D作品のヒットなどで売り上げを伸ばした年もあるが、入場者数ともにおおむね横ばいだ。 県内ではシネコン第1号として、MOVIX倉敷(倉敷市水江)が1999年、続いて2006年にTOHOシネマズ岡南(岡山市南区築港新町)がオープン。14年のイオンシネマ岡山参入で「売り上げは2、3割減。県内の映画人口は変わらず、パイの奪い合い状態」(MOVIX倉敷の室井俊輔支配人)と言う。郊外は年齢高め  各館はそれぞれの立地に見合った客層に着目し、アプローチ。MOVIX倉敷とTOHOシネマズ岡南は郊外に位置し、自家用車での来館が多いため、年齢層がやや高めなのが特徴だ。 MOVIX倉敷はイオンモール倉敷に入居していることから、買い物目的のファミリー層が多い。子供と一緒に観賞できる映画が人気だ。昨年12月に初めて、エントランスとロビーを大規模改修した。室井支配人は「ファミリー層の憩いの場として公園をイメージした」と話す。 一方、TOHOシネマズ岡南は、シネコンを核とした施設のため、映画観賞を目的に来館する人が目立つ。萩原岳宣支配人は「親子連れはもとより、40代以上の主婦やシニアの来館が多い」と分析する。女性対象に割引がある水曜日のレディースデイは通常の1・5倍といい、「最近上映したアクション洋画『ローガン』『キング・アーサー』のように映画好きが好む作品は好調」と萩原支配人。 ただ、シニア層はどの映画館もさまざまな割引が適用されることから、「売り上げ増や、新規客の取り込みといってもこれ以上の値引きもできない」(萩原支配人)のが現状だ。同館では中高年層が集う近隣の飲食店や娯楽施設などに、時代物や洋画といった上映作のポスターを張り出すなどPRに努めているという。