岡山 <衆院選2017>焦点区を追う 1区 保守分裂、三つどもえ 逢沢 一郎氏(自民・前)VS 高井 崇志氏(立民・前) VS 蜂谷 弘美氏(希望・新)

(岡山1区激戦か!? 希望の党 小池百合子代表来たる!!
2017.10.19 Thu

18:00~  希望の党演説会 会場:ハローズ津高店
代表 小池百合子  

18:00 岡山1区 はちや弘美 岡山3区 内山あきら 岡山5区 たるい良和 ハローズ津高店
19:00 岡山4区 柚木みちよし個人演説会 くらしき健康福祉プラザ)


 「激しい厳しい、最も難しい選挙になった。これまでの逢沢一郎の選挙とは違うんだということ、多くの人に伝えてほしい」

 自民前職の逢沢一郎氏(63)は公示日の10日、市役所前で街頭演説し、そう力を込めた。1986年から10期連続で当選を重ね、国会対策委員長も務めた党の重鎮。当初、選挙期間中の半分は他候補の応援のため県外で活動するつもりだったが、予定を変更してほぼ地元に張り付く。毎夜2、3回の演説会をこなし、票の上積みを狙う。

 衆院が解散された先月29日夕、当時自民県議だった蜂谷弘美氏(61)が突然記者会見し、1区で希望から立候補する意向を表明した。蜂谷氏は岡山市北区・加賀郡の選出で、前回2015年県議選では約1万3000票を獲得した。その地盤は逢沢氏とほぼ重なる。「もうびっくり。今までで一番の危機感だ」と陣営幹部。保守分裂選挙となり、情勢は一変した。

 蜂谷氏の弟が社長を務める建設会社「蜂谷工業」(同市北区)は、長年にわたる逢沢氏の支援者でもある。今月2日にあった逢沢氏の事務所開きには、社長ら約20人も顔を見せた。「こちらから出席を要請していないが、例年以上に来てくれた」と陣営は胸をなで下ろす。逢沢氏も10日、同社の社員が駆け付けた街頭演説で、わざわざ社名を出して結束を呼び掛けた。「岡山のため、蜂谷工業のテクノロジーを生かしてほしい」

 一方、希望新人の蜂谷氏。選挙戦の序盤、近年の県議選では選挙区に含まれていない同市南区を重点的に回った。聴衆から「あなたの演説が一番まとまっていた」と声を掛けられることも。中盤は地盤とする同市北区を回り、最後は市街地に乗り込む作戦だ。出馬表明が公示直前になったため、選挙準備を急ピッチで進めてきた。12日には念願のホームページを開設し、若者への浸透を図る。

 古巣との対決には「私は元々非自民系とも言える。戦いづらさは感じない」とどこ吹く風だ。初当選した03年は無所属。自民公認は2期目からで、蜂谷工業の支援もその時から受けてきた。出馬を決意した後、弟に報告したが、今回支援はない。報道各社の情勢調査では希望の失速も伝えられている。それでも「30年変わらない政治に風穴を開けたい。でないと出馬した意味がない」と変わらぬ熱意を見せる。

 立憲前職の高井崇志氏(48)はこうした保守分裂に割って入ろうと懸命だ。過去2回の当選はいずれも比例復活。13日夜、同市北区の会館であった個人演説会で約200人を前に「いろいろあった選挙だが、日本の立憲主義と人々の暮らしを守るため、一緒に戦ってください」と絶叫し、深々と頭を下げた。

 立憲から公認を得たのは公示直前の今月6日。準備が間に合わず、選挙カーの車体に「立憲民主党」と書かれたマグネットを張り付けて対応した。こうした中、直近の情勢調査で立憲の勢いは加速している。事務所には1区外の有権者から「高井さんを当選させるため、比例は立憲に入れる」との電話が複数寄せられているという。手応えを感じた陣営は16日朝、立憲の党名が書かれた選挙カーの看板用のシールも発注した。「自公政権を不安に思っている人の受け皿とアピールしたい」。立憲を前面に押し出し、風をつかもうとしている。

   ×  ×

 22日投開票の衆院選に向け、候補者たちが舌戦を繰り広げている。焦点区の状況を報告する。

………………………………………………………………………………………………………

 ◆立候補者(届け出順)

 ◇1区(3)=岡山市北区(一部除く)など

逢沢一郎 63 [元]党国対委長 (10)[自]前=[公]

高井崇志 48 IT会社役員 (2)[立](民)前=[共]

蜂谷弘美 61 [元]県議 [希] 新


///////
衆院選岡山 候補者アンケート【1区】 逢沢 一郎氏(自民・前)VS 高井 崇志氏(立民・前) VS 蜂谷 弘美氏(希望・新)


 衆院選の争点のうち四つのテーマについて各候補に聞いた。回答を原則として原文のまま紹介する。(届け出順、敬称略)

■逢沢 一郎(自民・前)
【消費税増税】税率を引き上げるべきですか 「〇」 社会保障の充実・安定と財政健全化のため消費税率10%は必要。医療・年金・介護・子育て支援を支えるのが消費税です。また子育て支援の延長線上に教育の無償化があります。無駄を排除し効率的な使い方を確立します。
【憲法改正】9条に自衛隊を明記すべきですか 「〇」 自衛隊の存在とその能力は日本の安全保障の基盤です。日本の平和を維持するための自衛隊を憲法に明記すべきです。戦後72年を経た今日、国民の合意は得られます。自衛隊員が誇りを持って任務に当たることが重要です。
【外  交】北朝鮮への圧力を強化すべきですか 「〇」 北朝鮮に核・ミサイルの開発を放棄させるために国連外交を中心に国際社会が一丸となって圧力を強化すべきです。特に中国、ロシアの協力が不可欠。偶発的な事故が起きないように、話し合いのチャンネルの維持も重要。
【原  発】今後も再稼働すべきですか 「〇」 日本のエネルギーの安定供給、エネルギー安全保障の観点から原発再稼働は必要。LNG、石炭、太陽光など再生可能エネルギーと並んで原発を位置づける。バランスが重要。世界の原発需要にも日本の技術で応えたい。

■高井 崇志(立民・前)
【消費税増税】税率を引き上げるべきですか 「✕」 増税の前に、政治家自らの身を切る改革と税金の無駄遣いをなくすことが不可欠。逆進性の高い消費税よりも富裕層への課税(所得税の累進課税、金融資産課税等)を行うべき。増税後の使途は子育て・教育に充てるべき。
【憲法改正】9条に自衛隊を明記すべきですか 「✕」 憲法9条は日本国憲法の平和主義の象徴で、世界に誇るべき条文であり、変えるべきではない。「自衛隊は合憲」がこれまでの政府見解であり、1項・2項をそのままで3項を加えるのは、政府見解と矛盾する。
【外  交】北朝鮮への圧力を強化すべきですか 「✕」 対話と圧力のバランスが重要。米国トランプ大統領との連携強化よりも、中国・韓国・ロシア等の近隣諸国との連携を深め、国連を中心に武力よりも外交によって解決を図るべき。米国一辺倒の外交は見直すべき。
【原  発】今後も再稼働すべきですか 「✕」 一日も早く原発ゼロを実現すべき。責任ある避難計画と核廃棄物の処分方法が決まらない限り再稼働は反対。現在、私が責任者となって原発ゼロの工程表を示す「原発ゼロ基本法案」と「省エネ・再エネ9法案」を準備中。

■蜂谷 弘美(希望・新)
【消費税増税】税率を引き上げるべきですか 「✕」 岡山県に、好景気の実感はありません。前回の消費税増税が、経済の落ち込みを招いたことを考えると凍結すべきです。使途変更は増税の言い訳にすぎません。財政再建は大企業の内部留保への課税などを考えるべきです。
【憲法改正】9条に自衛隊を明記すべきですか 「✕」 自衛隊の存在を含め、時代に合った憲法のあり方を議論すべきだと考えますが、存在明記にこだわるよりは、国民の知る権利を憲法に明確に定め、情報公開を進めることから改正の論議をはじめるべきではないでしょうか。
【外  交】北朝鮮への圧力を強化すべきですか 「✕」 北朝鮮に対しては日米韓が中心となり中国・ロシアを含め国際社会と緊密に連携し、対話を導く手段として制裁の厳格な実施を働きかけます。国際社会に多国間の対話の枠組みを進展させ、共生を重視する外交が望ましい。
【原  発】今後も再稼働すべきですか 「✕」 福島県飯舘村を訪れた時の衝撃を私は決して忘れません。2030年までに原発ゼロを目指します。私は、原発が日本の将来を担うエネルギーだとは考えません。再生エネルギーの比率を向上させ、エコ社会を実現します。


///////
 ◆立候補者(届け出順)

 ◇1区(3)=岡山市北区(一部除く)など

逢沢一郎 63 [元]党国対委長 (10)[自] 前=[公]

高井崇志 48 IT会社役員 (2)[立](民)前=[共]

蜂谷弘美 61 [元]県議 [希] 新

 ◇2区(4)=中区、玉野市など

山下貴司 52 法務政務官 (2)[自][破]前=[公]

垣内京美 51 党准中央委員 [共] 新

田部雄治 41 幸福県代表 諸 新

津村啓介 45 [元]内閣政務官 (5)[希](民)前

 ◇3区(4)=津山、備前、赤磐市など

尾崎宏子 61 党県委員 共 新

内山晃 63 社労士 (3)[希] 元

平沼正二郎 37 IT会社役員 無 新

阿部俊子 58 [元]副農相 (4)無 前=[自]

 ◇4区(3)=倉敷市(一部除く)など

橋本岳 43 党厚労部会長 (3)[自][額]前=[公]

柚木道義 45 [元]財務政務官 (4)[希](民)前

平林明成 62 党地区委員 共 新

 ◇5区(3)=笠岡、井原、総社市など

美見芳明 60 党地区委員長 共 新

樽井良和 50 [元]参院議員 (1)[希] 元

加藤勝信 61 厚労相 (5)[自][額]前=[公]
//////

立憲民主党 高井崇志FB 「さすが福山さん。いい演説でした。」10.15 福山哲郎さん(立憲民主党幹事長)

☆10.15高井たかしさんの応援に、福山哲郎さん(立憲民主党幹事長)がこられました。2年前の安保関連法が強行採決されたときの、参議院での福山さんの名スピーチは、今でも蘇ります。

☆今日はみどり岡山の友人が、ウグイス・ボランティアを高井さんの街宣車でがんばっているので(赤シャツ)、その応援もしたかったのです。彼女の声を聞くことはできませんでしたが、立ち姿、手振り姿も気持ちよくて見事でした。ラッキーなことに、福山さんともパチリ。

☆福山さんのスピーチは感動的でした。わかりやすい言葉のベースに福山さんの政治哲学が感じられました。時の人にはオーラがあります。そのオーラはその場でないと味わえないので、機会があれば居合せることにしています。

☆ちょっと長くなりますが、大雑把にまとめました。臨場感までは伝わらないかもしれませんが、よかったらお読みくださいね。私のタイムラインの少し前に動画もタグ付けアップされています。高井たかしはもちろん、岡山1区以外の方も、比例代表は立憲民主党にとお願いします。

☆☆☆☆☆☆

☆立憲民主党新米幹事長の福山哲郎です。枝野ゆきおさんは、もしかしたら、自分も無所属で出ることになるかもしれない。選挙区で今までずっとがんばってきた仲間が出られなくなるかもしれない。その仲間は一人だけではなく、その後ろに多くの支援者がいらっしゃる。

☆枝野さんは、新しい党をつくるべきかどうか悩んでいた。そのときに、枝野立て、枝野立てと、多くの仲間の皆さんが枝野さんの背中を押していただきました。私にも、選択肢がなくなるではないか。投票にいけない人がいっぱいでてくると、多くの皆さんからお話をいただきました。

☆枝野さんと夜中まで毎日話し合いました。枝野さんは腹をくくり、一人で立憲民主党を結党すると会見されました。お金はない、人が集まってくれるかもわからないなかでのスタートでした。
そんななか、私は立憲民主党でやりたいと、いち早く馳せ参じてくれたのが、高井たかしさんであります。ほんとうに嬉しかった。そういう人が次から次へと出てきていただいて、今、闘わせていただいています。

☆私は参議院議員なので、じっとしていればよかったのかもしれませんが、今から2年前の9月19日。国会前に10万人の方が集まった安保法制。私は夜中の国会で、立憲主義と民主主義をとりもどす闘いはここから始まると言いました。その私が希望に入ってはいけない。入ったら、政治家として立っていられなくなる。そう思ったときに、一人で立ち上がった枝野さんといっしょに、この国の政治を、立憲民主党でがんばらせていただこうと決意しました。

☆まっとうな政治をとりもどしたい。あらゆる分野でです。北朝鮮が問題だといっているのに、それを放ったらかしておいて解散しました。森友学園、加計学園問題。文書は捨てる、記憶はなくす、国会は開かない。この国の民主主義はめちゃくちゃになります。

☆そして、国民の生活。アベノミクスのトリクルダウンは落ちてきませんでした。上が儲かったら、国民にはその下から落ちてくる。まさに安倍さんは上から目線で、強権的にものごとをしてきました。アベノミクスは国民生活を潤しませんでした。それにもかかわらず、消費税をまたあげようとしています。こんな無茶苦茶な政治はまっとうな政治にもどしていかないといけません。

☆自民党と最も違うところは、ヘイトスピーチ、障害者差別、LGBT差別。いつから日本は窮屈な社会になったのでしょうか。いつから物言えば唇寒しの時代になったのでしょうか。国会議員が、自民党に200人いようが300人いようが、安倍総理に何も言えなかったら、いないのも一緒ではないですか。

☆国会は言論の府です。情報を開示して、議論をして、いろいろ意見を集約していく過程のなかで、民主主義は成熟していきます。国会の納得が深まっていきます。なんでもかんでも数で押し付けてくるのは、民主主義でも政治でもありません。

☆私たちは、排除や分断ではなく、多様性を大切にした社会にもどしていきたい。人それぞれに人生があります。人生も生き方も違っていい。このことをみんなが理解しあう社会の方がよほど社会として強いと思います。分断と排除で、差別を繰り返し、違うものを排除していく社会はもろくて弱いです。そして、国民は不安です。そんな息苦しく窮屈な社会を、風通しのいい、違いを認め合う社会に変えていこうではありませんか。

☆原発は高井さんが専門家です。あの東日本大震災のときに、枝野さんは官房長官、私は副長官。原発が一度暴れだしたら、人間の手ではどうしようもなくなることを、一番、目の当たりにしてきました。福島の皆さんには、未だにご苦労をおかけしています。

☆そういうなかで、原発ゼロはもうスローガンではありません。1日も早く、原発ゼロを実現する行程表をつくる。私たちが作った固定価格買取制度では、この5年間で、原発約20基分の設備ができました。技術革新がどんどんすすんで、世界は、原発ゼロのライフスタイルをつくるための競争に入っています。

☆使用済核燃料、原発立地自治体の雇用問題など、どういう社会をこれから20年先に作っていくのか。そのことを国民にお示しする準備をしていきたい。枝野さんと私は、あの原発事故と向き合った政治家の責任としてやっていきたいと考えている。その時に、高井たかしさんが必要なのです。高井さんは、前の民進党のとき、一生懸命、その行程表をつくる仕事をしてきました。なんとしても高井さんに国会にもどってきていただいて、原発ゼロへの道筋を一緒に担ってほしいと思います。

☆われわれの仲間の議席をいただき、いまの永田町政治に流されない。理念・政策をもって、枝野代表とともに、そして国民の皆さんとともに歩む立憲民主党を育てていただけませんでしょうか。一緒に闘っていただきたいと思います。選挙区は高井たかしさん、比例代表は立憲民主党へのお願いとさせていただきます。
//////

米国でささやかれる安倍退陣後の「次の首相」

米国の政府関係者が考える日本の総選挙後のシナリオとは?

この頃東京にいると、来る日本の総選挙は何についての選挙でもないように思われてくる。もちろん安倍晋三首相は、何か――北朝鮮か、税か――についての選挙にしようと試みているが、これは明らかに彼自身についての選挙だ。

そして、小池百合子東京都知事は、これは希望についての選挙だと言っている。しかしそれはおおむね、権力を得たいという彼女の希望を意味しているように見える。おそらく、選挙運動すべき真の争点を唯一持っているのは、立憲民主党であり、彼らはこの選挙を、憲法と安全保障についての選挙にしたがっている。だが、この党が日本を統治できる日は程遠い。

選挙結果によって日本が変わることはない
表面的な意義の不在にもかかわらず、誰が日本で権力の座に就くかということは、依然として米国にとっては重要である。北朝鮮危機や中国の台頭が続く中で、強く安定した日本は、米国の安全保障・外交政策にとって必要不可欠だからだ。

こうした状況下、首都ワシントンのドナルド・トランプ政権界隈にいる人々は、この選挙にどのような見解を持っているだろうか。 政策立案者たちは、この選挙を意識しているだろうか。 何が起こると予想しているのだろうか。そして、安倍首相が退陣するとなれば、それは日米関係にとって何を意味することになるだろうか。

筆者はこれらの疑問を、政権内部の人間を含む、ワシントンの選り抜きの日本通たちに聞いて回った。その総意は驚くようなものではなかった。日本専門家はもちろんこの選挙を注視しているが、日本の選挙結果を米国人のほとんどは気にしておらず、それは政府内も同じことだ。しかし、それは米国の政策立案者のほとんどが、日本では何の変化も起きないだろうと、想定しているからである。

「日本の選挙が、ここワシントンで大きな注目を集めているとは思わない」と、かつて国務省に勤めた経験も持つ、米国笹川平和財団を率いる老練な日本通、ジェームズ・ズムワルト元駐日大使は言う。「選挙の結果として、日本の対米政策や日米関係に大きな変化が起こると予測している人は多くないからだ。中国の(18日から始まる)共産党大会や最近の北朝鮮の行動のほうが、はるかに、はるかに大きなニュースだ」。

日本が今、米政府の「政策レーダー」にあるのは、選挙があるからではなく、近く行われるトランプ大統領のアジア歴訪が、日本から始まるためである。トランプ大統領が毎日のように米国の過去の取り組みに対して批判を続ける中で、同大統領がアジアで(特に米国の同盟国に対して)やってしまいかねないことに対して、不安感が膨らんでいるのである。

「アジア担当の政策立案者たちは、選挙を意識はしている」と、ジョージ・W・ブッシュ大統領の国家安全保障アドバイザーを務めたジョージタウン大学教授のマイケル・グリーン氏は言う。現政権も同氏にアドバイスを募っている。「ただ、その関心は、トランプ大統領のアジア訪問がどうなるのかに対する不安によって薄まっている」。

小池都知事のピークはすでに過ぎた
米国議会の見解も変わらない。「日米関係を緻密に追っている少数の議員やスタッフは例外として、米議会ではほぼ関心を持たれていない」と、日本の問題に詳しいあるベテラン職員は言う。「これだけ関心がない理由の1つは、米国の政治の現状とも関係がある」。実際、米議会にとっては、オバマケアに関する議論や、税制改革、ロシア疑惑に関する調査、そしてトランプ大統領の果てしないツイートのほうが、喫緊の課題だ。

「この頃シンクタンク職員や外交政策専門家がやっていることのすべては、トランプの直近の政策や発言を解釈、予想しようと試みることになっている」と、政権に関係のあるベテランのアジア通も認める。

総選挙が決まった直後、小池都知事が希望の党を結成するという驚くべき動きを見せ、この選挙が安倍首相と自民党が計算したよりも接戦になるかと思われたときには、総選挙への関心度が一瞬高まった。が、事態はすぐに変化した。

「安倍首相は生き残るだろう。小池(都知事)はすでにピークを過ぎ、メディアは彼女を非難しつつある、という印象が増大している」グリーンは語る。「もちろん、米政府内の誰も、彼らが誰を好むのかについて公には言うわけもない」

第1次オバマ政権時に日本担当部長を務めた、米国きっての知日派ラスト・デミング氏も「小池(都知事)とその新党についての当初不安が浮上したが、小池が立候補しないうえ、公約が不明瞭で、民進党の多くが参加しないとわかってから、新党への大衆の熱狂は弱まったと見ている」と話す。同氏は現在、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院で教鞭を執っている。

米国の政策立案者たちはまた、自民党の勝利だけでなく、安倍首相が権力に留まることをも予想している。これは同首相のトランプ大統領との個人的な関係を考慮すれば、重要なことである。

「安倍首相率いる連立政権が国会で確固たる過半数を確保すれば、米国の政策立案者は直ちに関心を失うだろう。なぜなら中国、ロシア、北朝鮮のニュースは、はるかに重要な影響を米国にもたらすからだ」と、ズムワルト元大使は予測する。

日本通が描く「シナリオ」
ただ、米国の政策立案者たちは、ほぼありえないという共通認識を持ちながらも、選挙結果によって安倍首相が権力から引きずり下ろされる可能性を完全には排除していない。

「安倍首相が敗北すれば、それは秩序に対するショックとなる。この地域、特に北朝鮮に関する米国の政策とかかわりにおいて、日本から安定的な協力を得られなくなれば、政策的な不安定さが増す」と、あるベテラン議員は話す。

「伝えられているところによると、本当かどうかはともかく、安倍首相はトランプ大統領と関係がある外国人指導者の中で、聞く耳を持つ数少ない人物だ。一方、安倍首相以外――女性指導者に対するトランプ大統領の『不公平な』扱いを考えると――特に女性が首相となった場合には、同盟関係に相当な摩擦が生まれることは容易に想像できる」(同議員)

日本通たちの小さな仲間内で議論されているひとつの筋書きはこうだ。自民党は政権を維持するだろう。しかし、議席減は安倍首相に辞任を強いて、共にワシントンでもよく知られている前外務大臣の岸田文雄氏や、元防衛大臣の石破茂氏が、新しい自民党総裁に就任することになる――。

「(新政権になって)最も困るのは、現在安倍首相とトランプ大統領の関係がうまくいっていることを日々感謝している外務相と国務省の役人たちだろう」と、グリーン氏は話す。「トランプ大統領と、(韓国の)文在寅大統領との関係のような困ったものにはきっとならないにしろ、岸田氏や石破氏が首相になった場合、今ほどいい関係は望めない」。

デミング氏も、「もし安倍首相が去れば、小泉純一郎政権と第2次安倍政権の間の期間のような、日本の政治的リーダーシップが弱い期間が再来するおそれがある」と指摘する。「それは日米関係にとっても、世界にとってもよいことではない。新政権は、安倍首相ほど、トランプ大統領を巧みに扱えるとは思えない」。

ウォール街は黒田日銀総裁の先行きに関心
安倍首相の退陣をあまり懸念していない専門家もいる。「たとえ、自民党内に若干の政策変更があったとしても、岸田氏のような人物に引き継がれることになれば、トランプ政権が大きく戸惑うことはないだろう」と、かつての防衛官僚であり、ワシントンの卓越したシンクタンクであるカーネギー国際平和基金でいちばんの日本専門家である、ジェームズ・スコフは主張する。

「政権が変わることの影響は大きなものにはならないのではないか。なぜなら、日本はトランプ政権のアジア政策における最も重要な要素であり、日米間の問題は、トランプ政権がアジアのほかの地域で抱えている問題と比較して小さなものだからだ」

一方、ウォール街は政権交代にそれなりの関心を示しているようだ。「日本銀行の黒田(東彦)総裁の先行きについて、機関投資家やヘッジファンドから多く問い合わせがきている」と、シンクタンク・戦略国際問題研究所(CSIS)マイケル・グリーン氏は明かす。「安倍首相の退陣は、日本国債や為替、マクロ経済問題のほとんどに直接影響を与えると見ている」。

ただ、ウォール街も日本での政権交代よりも、北朝鮮との戦争のインパクトを心配している。日本人はこれを、「ジャパンパッシング」と嘆くかもしれない。しかし、それはこうともとらえられる。グローバル政治が混渾としている中で、日本の退屈な「何もない」選挙は、今日の世界において唯一の「グッドニュース」なのかもしれないのだ。
//////
//////