大学プレテスト 課題解決力を適切に測れるか  問題公表 (岡山 から グローカル)

 思考力や表現力を的確に測るのは、容易ではない。受験生の負担に配慮しながら、問題の内容や構成の検証を尽くすことが大切である。

 大学入試センター試験に代わり、2020年度から実施される大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)の結果が公表された。全国の国公私立高校の4割にあたる約1900校で、延べ18万人が参加した。

 出題には、苦心の跡がうかがえる。現行のセンター試験との違いを際立たせようとした結果だろう。教科書で扱われないような複数の資料を読み比べて、自ら考える力や課題を解決する力を問う出題が各教科で目立った。

 世界史、日本史は図表や絵画資料を多用した。化学や生物は実験・観察の過程を重視している。暗記偏重になりがちな高校教育の改善を促す効果が期待できよう。

 国語では、文学的な文章だけではなく、生徒会の規約や学校新聞などの実用的な文章から情報を読み取る問題が登場した。実社会でも役立つ読解力の向上を主眼とした点は理解できる。

 マークシートの選択肢から正解を全て選ばせるなど、従来にない出題方式も物理、数学を中心に導入された。当てずっぽうでは通用しにくく、正答率は低迷した。

 大量の文章を読みこなす必要もあったため、結果として難易度は上昇した。50万人が受ける共通テストには、基礎的能力を測る役割がある。どの程度の難易度が適切なのか、見極めが重要となる。

 国語と数学で導入される記述式問題の採点には、不安が残る。民間業者による採点結果のチェック体制に万全を期したい。

 記述式では、大学への出願の際に行う自己採点の在り方も課題だ。文脈の適切さや誤字脱字を受験生が正確に判断できるのか。

 実践的能力が重視される英語のプレテストは、来年2月に先送りされた。実施方針の決定が遅れ、準備が間に合わなかった。

 国立大学は、英検などの民間試験と共通テストの両方を課す方向で足並みをそろえる。具体的な実施方法は未定だ。受験生の負担を軽減する工夫が求められる。

 共通テストの出題の狙いについて、高校への周知が不可欠だ。移行期に受験生が動揺すれば、塾での対策が過熱する恐れがある。

 来秋には各大学を会場に、本番の形式により近いプレテストが行われる。円滑な移行に向けて課題を洗い出し、改革の理念が生きる試験につなげてもらいたい。

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国語・数学で初の記述式問題 京都・滋賀で共通テスト試行=高校生10万人以上-大学入試センター


岡山県内でも大学共通テスト試行=高校生10万人以上-大学入試センター
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 2021年1月から始まる「大学入学共通テスト」について、大学入試センターは4日、第1回試行調査の問題を公表した。国語と数学で記述式問題が導入されたほか、複数の資料を読み解いたり、探究活動を重視したりする問題が各教科で出され、現在の大学入試センター試験と比べて出題傾向が変わった。入試センターは採点途中のマークシート式問題の正答率も公表したが、「分析中」だとして、センター試験との難易度比較はしていない。


試行調査は11月、英語を除く5教科11科目について行われ、全国約1900校の延べ約18万人の高校2、3年生が参加。マーク式問題は約7割の採点が終わっているが、記述式問題の採点はこれからで、結果は来年3月までに公表する。

 小中高で教える内容を決めた学習指導要領は見直しが進み、20年度の小学校から順次実施される新指導要領では、十分な知識をもとにした思考力・判断力・表現力を重視する。試行調査もこうした点を意識し、暗記した知識を問うのではなく、生徒会規約や会話文などを読み込んで答える国語の記述式問題のように、複数の資料を読解させる問題が多かった。

 この結果、問題冊子のページ数はセンター試験と比べて大きく増え、グラフや表、会話文などが盛り込まれた数学Ⅰ・数学Aは過去3年のセンター試験で最も多かった16ページから32ページに倍増。地理や歴史でも、ページ数が大幅に増えた。試験時間は国語がセンター試験の80分から100分に、数学Ⅰ・数学Aは60分から70分に延びた。

 マーク式問題の正答率は0・9~87・1%。資料から抜き出した情報を組み合わせて考える問題や、数学で出された、与えられたデータから2次関数の式を立てて考えるような問題に苦戦する傾向が見られた。2年生も受けていることや部分点の配点が未定のため、教科ごとの正答率は出していない。

 大学入試センターは記述式問題の正答率なども踏まえ、来秋に再び試行調査をする予定。必要があれば19年にも実施するという。共通テストの英語は「読む・書く・聞く・話す」の4技能を評価するため民間の検定試験を活用する。ただ、24年までは入試センターが作成する「読む・聞く」の問題も併用されるため、来年2月に試行調査を実施する。

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新共通テストに向けて実施のプレテスト 問題公表


大学入試センター試験に代わる新たな共通テストの実施に向けて、先月、試験的に行われたプレテストの問題が4日、公表されました。国語と数学の問題には初めて記述式の解答が導入されていて、専門家は「記述の力をつけることは重要だが、大量の採点をいかに迅速かつ正確に行うか、検証することが必要だ」と話しています。
大学入試センターは、2021年1月から始まる共通テストの実施に向けて、先月、初めてプレテストを実施しました。テストにはおよそ2週間にわたって全国の高校生10万人以上が参加し、4日、その問題文が公表されました。

これを受けて、埼玉県の私立高校では、早速、新たなテスト対策として、国語に導入された記述式の解答を求める問題に取り組みました。

テストを受けた男子生徒の1人は「文章から必要な情報を見つけ出し、さらに自分の言葉で表現しなければいけないので、難しいと思いました」と話していました。

一方、記述式の導入により課題となるのが採点ですが、先月、大学入試センターはその様子を一部公開しました。

採点に当たるのは委託を受けた民間事業者で、解答をコンピューターに画像データとして取り込んだあと、採点のばらつきをなくすため、1つの解答に対して2人が採点に当たります。さらに、結果が一致しなかった場合は複数で協議することも検討しているということです。

東京大学高大接続研究開発センター長の南風原朝和教授は「記述式の問題は大量の資料を読み込ませ、早い読解が問われている。書く力を身につけることは重要だが、大量の採点をいかに迅速かつ正確に行うか、検証することが必要だ」と指摘しています。
国語の記述式問題例
国語の記述式の問題例は次のとおりです。

ある高校の生徒会で、部活動について話し合う生徒の会話が示されています。部活動の終了時間を延長するかどうか話し合っていたところ、ある生徒が「課題もある」と発言しました。

問題では、このあと「生徒がなんと述べたと考えられるか」について、3つの資料を活用して80字から120字でまとめるよう求めています。

3つの資料には、終了時間の延長を求める声が多いことや他校でも延長している高校が多いことが表で示されたり、延長すると通学路の交通量のピークと重なり危険だと指摘したりした校内新聞の記事が使われています。

正答例は、「確かに、部活動の終了時間の延長の要望は多く、市内に延長を認める高校も多いことから、延長を提案することは妥当である。しかし、通学路は道幅も狭いうえに午後六時前後の交通量が特に多いため安全確保に問題があり、延長は認められにくいのではないか」となっています。

文章を読んで自分の考えを記述するのではなく、図やグラフから必要な情報を読み取り、一定の条件のもと、表現する力が求められています。
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大学入学共通テスト、試行試験結果速報…数学IAで正答率0.9%の難問


大学入試センターは平成29年12月4日、11月に行われた「大学入学共通テスト」の導入に向けた試行調査(プレテスト)の結果速報を公開した。記述式問題を除く、11月29日時点の正答率速報が公表されている。

 平成32年度(2020年度)から導入される、現行の大学入試センター試験(センター試験)の後継テストにあたる「大学入学共通テスト」。大学入試センターは平成29年11月、導入に向けた試行試験(プレテスト)を実施した。

 試行調査への参加率は、全高等学校・中等教育学校の38%にあたる1,889校。11月13日から24日の期間にかけて、任意の日時で調査した。国語と数学1(数学I・A)は高校2年生以上、数学2(数学II・B)、地理歴史、公民、理科は原則高校3年生以上が受検した。受験者合計17万8,129人のうち、11月27日時点でのマーク式問題答案の読取率は69.4%。大学入学共通テストの国語と数学に導入される予定の記述式問題も試行されたが、答案の読取と速報は12月4日現在、まだ公開されていない。

 11月29日時点の読取状況によると、なかには正答率0.9%と、1.0%を切る「難問」もあった。たとえば、2次関数の性質を活用して文化祭で販売するTシャツの価格を求め、利益が最大になるよう回答する「数学I・A」第2問(3)の正答率は3.0%だった。

「大学入学共通テスト」平成29年度試行調査(11月実施) 出題された問題の例 <数学I・A> 第2問(必答問題)
画像:出題例<数学I・A> 第2問(必答問題)

「大学入学共通テスト」平成29年度試行調査(11月実施) 出題された問題の例 <数学I・A> 第2問(必答問題)
画像:正答率が3.0%だったのは(3)

 同じく「数学I・A」では正四面体における辺と線分の垂直条件について、それを証明するために用いる空間図形の性質を考察して回答する第4問(3)の正答率は3.1%。同問題は、該当する選択肢をすべて選択し回答する形式だった。該当する選択肢をすべて選択する問題は第5問(5)でも見られ、正答率は0.9%だった。

 このほか、「物理」では第3問AB・問5で2.5%、「化学」では第1問・問4で4.6%、「生物」では第5問B・問5で4.6%と、受検者の多くが回答できなかった問題があることがわかった。

 大学入試センターは、実際の問題構成や内容は今後、今回の試行調査の解答状況を分析しながら検討しているとしている。なお、今回の試行調査で出題された問題の構成や内容は、必ずしもそのまま平成32年度からの大学入学共通テストに受け継がれるものではない。平成30 年度は大学入学共通テストの試験会場となる大学を実施会場として、問題作成や採点方法、試験の実施運営などを含めた総合的な検証を行う予定。

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大学新テスト試行、問題2割増 素早くこなす力必要に 

 文部科学省は4日、大学入試センター試験に代わって2020年度に始まる「大学入学共通テスト」の試行調査(プレテスト)の問題と結果を公表した。複数の文章や図、グラフを読ませる問題が多く、4教科11科目で問題のページ数はセンター試験より2割増えた。共通テストは考える力に加え、情報を素早く処理する力も問われる試験になりそうだ。


都立桜修館中等教育学校で行われた「大学入学共通テスト」の試行調査(11月、東京都目黒区)
 試行調査は11月13~24日、全国約1900校でのべ18万人の高校生が受験した。共通テストでは国語と数学I・Aに記述式問題が導入され、マークシート式問題も思考力を問う内容に変わる。今回の調査もこれと同じ形式で、地理歴史・公民、理科を含む計11科目で実施。民間の検定・資格試験を活用する英語は行わなかった。

 各科目の問題のページ数を過去3年のセンター試験で最も多かった時と比べると、現代社会、物理、化学を除く8科目で7~100%増。11科目合計のページ数は363ページと18%増えた一方、問題数は計288問と8%少なく、1問あたりの情報量が増えた。

 数学I・Aは身近なテーマについて生徒が議論する場面などを多く設定し、ページ数が2倍になった。数学2・Bと合わせると8割増。

 国語では高校の生徒会で部活動について話し合う記述式の大問で生徒会規約、会話文、部活終了時刻のデータなど計5種類の文章を示した。古文は源氏物語の同じ一節でも、解釈の違いで表現が大きく異なる3種類の文章を読み比べさせた。

 作問や採点を担う大学入試センターは試行調査のうちマーク式問題の正答率(速報値)を公表した。正答率の範囲は0.9~87.1%で、過去のセンター試験と大差なかった。科目ごとの平均正答率は公表しない方針だが、センター試験に比べると低い科目が多かったようだ。記述式は今後採点し、全体の結果分析も含めて18年3月末までに公表する。

 センターは試行調査の問題構成について「思考力・判断力・表現力を問う新しい傾向の問題の割合をあえて多くした」と説明している。本番の問題作成に向け正答率などのデータを集めるとともに、求める学力像を明確に打ち出す狙いがある。

 今後は18年2月に英語のみの試行調査を実施。同11月に行う10万人規模の試行調査では知識・技能をシンプルに問うような問題を増やし、本番に近いバランスにするとしている。

 マーク式問題で正答率が低かったのは、ある事柄の概念や因果関係を問うような問題。日本史Bでは1950年代の経済成長に関し「神武景気」を「大型設備投資による景気拡大」と表現した選択肢を正解としたが、正答率は21%だった。

 異なる分野の知識を合わせた問題でも課題がみられた。物理ではブランコが揺れる周期を短くする方法について、ひもを短くする、重心を上げると異なる単元の知識を同じ小問で尋ねたが、正答率は21%だった。

 マーク式では、正答の数を示さず「正しいものを全て選べ」という新しい形式の問題を計14問出した。正答率は30%未満が12問、うち3問は10%未満だった。センターは結果を分析し、一部の選択肢のみ合っていた場合に部分点を出すかなども含めて検討する。

 共通テストは高校・大学教育と入試を一体で改革する国の「高大接続改革」の目玉。今後は記述式問題の採点体制、段階別評価も含む成績評価の方法、英語の民間試験の選定などについて検討を進める。19年度初めに詳細な実施大綱を策定し、21年1月に初回を実施する。英語の民間試験は20年4月から受けられる。

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大学入学共通テストの試行調査(プレテスト)の全科目の問題と正解(表示されない場合はパソコンからご覧ください)

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大学新テスト試行、問題2割増 素早くこなす力必要に PDF 問題と解答

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大学入学共通テストのプレテスト 国語記述式は実用文、マーク式も新傾向続々


大学入試センターは12月4日、センター試験に代わり2020年度(21年1月)から実施する「大学入学共通テスト(新テスト)」の試行調査(プレテスト)の問題と高校生の正答率(速報値)などを公表した。国語と数学で記述式問題を出題したほか、他教科のマークシート式で解答する問題も、センター試験でみられなかった新傾向の出題を多く取り入れた。ただし、試行調査は新傾向問題を示すことを重視したため、問題構成や分量は本番とは異なるという。入試センターでは、今回の問題ごとの正答率などをふまえ、本番の試験の問題構成や内容などを検討する。


全国1889校の高校2・3年生が参加
入試センターによると、試行調査は11月に全国の高校・中等教育学校の38%にあたる1889校(公立1205校、国立16校、私立668校)が参加して実施し、高校2~3年生のべ約17万8000人が受けた。「国語」「数学Ⅰ・A」(以上の科目は高校2・3年生が対象)「数学Ⅱ・B」「世界史B」「日本史B」「地理B」「現代社会」「物理」「化学」「生物」「地学」(以上は原則高校3年生が対象)の11科目を実施し、学校ごとに1~数科目を受けた。
文部科学省は新テストを知識・技能を評価しつつ、思考力・判断力・表現力の評価を中心に評価する試験にする考え。そのため、国語と数学で記述式問題を出題し、他教科を含むマーク式の出題方針も見直す方針を掲げている。今回の試行調査の出題にもその方針が反映された。

国語で「部活動規約」出題
例えば、国語の第1問は記述式の小問3問から成り、解答字数はそれぞれ50字以内、25字以内、80字以上120字以内。生徒会の部活動規約と、規約をめぐる生徒たちと先生の会話文、部活動をめぐる表やグラフなどの資料を題材にした。今年5月に公表されたモデル問題に続き、センター試験では出題されていない「実用文」を出題した。他のマーク式の問題も出題方法が様変わりした。特徴は、複数の題材を組み合わせたことだ。評論文は、路地をテーマにした文章と表・写真を合わせて読み解く形式。文学作品「幸福な王子」を踏まえてつくられた小説を題材にした出題や、源氏物語の同じ場面を扱った2つの古文と関連する注釈書を読ませる出題などもあった。

数学はTシャツ販売や道路渋滞など
数学は、日常生活を題材にし、「数学の良さ」を実感させることを意図して出題したといい、文化祭でのTシャツ販売や、観光客の消費額、高速道路の渋滞状況などを題材にした。記述式は小問3問を出題。コンピューターのグラフ表示ソフトを扱った大問では、グラフの頂点の動きを、数式を使って記述させた。

歴史で教科書にない図やグラフも
世界史では、日本に中国からもたらされた「金印」を題材にした問題があった。次期学習指導要領で日本史と世界史を合わせた科目「歴史総合」が創設されることを意識した出題だ。日本史では、中世までの日本の会議や意思決定について生徒が調査学習をする場面を設定した出題や、授業で博物館に行く設定の出題などがあった。生徒が設定した課題について調査や発表をする「探求学習」への転換を意識した出題といえる。教科書に載っていないグラフや図版を扱った問題もあった。入試センターによると、初見の題材を扱った問題も、教科書で学んだことを基に考えて解けるよう工夫したという。

理科でも、探究活動を意識し、実験を扱った問題を各科目で出題した。実験の手順を考えさせる出題もあった。国語や数学など8科目で、正答の数を示さずに、あてはまる選択肢を全て選ばせる出題もあった。センター試験ではなかった出題形式だ。

全て選べ…でも正答1つ、高校生苦戦
入試センターはマーク式問題の小問ごとの正答率(約7割の答案の採点を終えた速報値)も明らかにした。正答率0.9%から87%まで幅広かった。センター試験でも正答率は1割弱から9割以上まで散らばりがあるという。数学や理科で数値を書かせる問題の正答率が低かったほか、「全て選べ」としながら正答が一つだった地理の問題の正答率は22%だった。新傾向問題でも絵画資料を選ばせる世界史の問題を76%が正答するなど、出題者の予想以上に出来が良かった問題もあったという。国語と数学の記述式問題は未採点。問題の公表後に民間企業に委託して採点作業に入るという。

本番の難易度は「バランスよく出題」
試行調査の11科目中8科目でセンター試験よりページが多かった半面、小問数は8科目でセンター試験より少なかった。入試センターによると、今回の試行調査は、本番の問題構成や内容を検討することなどが狙い。そのため、センター試験のような想定平均点を設定せずに、国語の全ての大問で複数の素材を読み解くことを求めるなど、新傾向の出題や、じっくり考えることが必要な問題を多く出題した。入試センターの大杉住子審議役は「知識の質を問う問題、思考力・表現力・判断力を問う問題が新テストの狙い。(センター試験と)難易度を変えた意識はないが、今までの受験の手法では解けない問題もあった。(本番では)難易度の高い問題から低い問題までバランスよく出題する」と話している。

英語の試行調査は来年2月に実施する。来年11月には、本番同様の問題構成で、高校3年生10万人が受けるプレテストを実施する。
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「課題が続々 大学入学共通テストは大丈夫か」

大学入試センター試験にかわって導入される大学入学共通テストのプレテストが11月行われました。大学入試センターは、4日、プレテストの内容や新たに導入される国語と数学の記述式問題の採点方法などを明らかにしましたが、課題は山積という状態が浮かび上がっています。
 

▽心配される検証期間の短さ
▽明らかになった記述式問題の課題
▽民間の検定テストで英語の試験は代替できるのか
以上、3点をポイントに考えます。

大学入学共通テストは、1点刻みの入試問題ではなく、知識を活用し、自ら判断する力を測るという大学入試改革の目的を実現するため、大学入試センター試験に変わって導入されるものです。今の中学3年生が受験年齢に差しかかる2021年1月が最初です。
大きく変わるのは、▽国語と数学にマークシートに加えて記述式の問題を導入すること、▽英語で「読む」「聞く」力に「書く」「話す」力を加えた4技能を評価することです。このうち英語は、4つの技能を測ることができる民間の資格・検定テストを活用することになっています。

今回のプレテストは、共通テストの導入に向けた問題点などを検証するため行われています。最も多い国語で69000人が受けるなど、高校2年生を中心にのべ19万人が参加して先月13日から24日にかけて実施されました。共通テストの実施主体となる大学入試センターは、マークシート式の問題でも、知識を問うだけでなく、思考力や判断力、表現力を測れるように問題の改善を図るとしています。プレテストは来年度も行う予定ですが、センター試験の前身の共通一次試験の場合、本番の5年前から4回のプレテストが行われています。センター試験の問題は、本番まで2年間かけて作られていますから、共通テストは来年には問題作りに入る必要があります。思考力、判断力、表現力を問う問題をどう具現化するのか、難易度をどうするのかという大きな課題もある中、検証期間の短さが心配です。実施時期ありきで始まったことの弊害が露呈した形です。

公開されたプレテストの問題からは、記述式問題の課題が見て取れます。
共通テストの国語と数学の記述式問題は、それぞれ3問程度出されることになっていて、今回のプレテストもそれにならって3題、出されています。国語の記述式は、会話文と資料を読み解いた上で、25字、50字、120字の記述を求めています。
中教審委員も務める国文学者のロバート・キャンベルさんは、「受験生が主体的に何を学び、考えたかを試すことができる」と一定の評価をしています。
一方、大学入試改革に詳しい東京大学教授の南風原朝和さんは、「問われている内容への答えとなる語句を資料の中から読み取り、それを書き写すことを求める読解力のテストで、文章を論理的に組み立てるという意味での記述力、表現力をテストする問題ではない」と否定的な意見です。
このように専門家の評価は分かれた形です。毎年、一定の水準の問題を作り続けなければならないのが入試問題です。記述式は、これまでの蓄積がないだけに、その道筋は、まだ見えていないというのが実状です。


記述式問題の最大の課題は、マークシート方式と比べて格段に手間のかかる採点にあります。基本的に機械で正誤が判断できるマークシート方式と違って、人が採点に関わらざるを得ないからです。
今回、大学入試センターは、記述式の採点方法を公表しました。採点期間はセンター試験に比べて1週間長くすることにしました。これまでセンター内部で行ってきた採点ですが、外部に委託して行われます。採点者には正答の条件が示されます。今回のプレテストでは、120字の記述の場合、求められた条件は4つです。もともと120字程度の記述では、思考力、表現力は問えないという指摘がありましたが、誰が採点しても公平な結果になることと、限られた時間の中で採点を終える必要があることが足かせになっている形です。

採点作業は、まず1つの回答を2人が採点し、一致した場合はそのまま結果登録されます。一致しない場合は、上位格の別の採点者が採点するなど4段階の採点体制を取ることにしていますから、1つの回答の採点に最低でも2人、判断できない場合は、5人以上が携わることになります。

50万人が受験する共通テストで、何人の採点者が必要なのかは、見当がついていません。
このため今回69000人分の国語のプレテストを1000人が採点して適切な人数を含めて検証するということです。ただ、適切な人数をはじき出せたとしても本番の共通テストで50万人分の採点者を確保できるのかという問題が残ります。そこは、人選を含め、外部の業者に丸投げのような形となります。業者にとっては採点者の質の確保も含め、大きな負担となります。大学入試センターは、受験生側が本当に信頼に足るような採点をしてもらえるのか不安を抱えることがないよう、業者側へのガバナンスを徹底する必要があります。


3つ目のポイント、英語についてです。英語の「読む」「聞く」「書く」「話す」の4技能を測るため、共通テストでは、民間の英検やTOEICなど複数の資格・検定試験を活用するほか、共通テストが行うセンター試験と同じ形式のテストが、当面併存することが決まっています。どちらを利用するかは、大学ごとに決めることになっていますが、すべての国立大学は、先月、両方の試験を課すことを決めましたから、いずれにしても受験生の負担は増えます。
民間の資格・検定試験のうち、どの試験を活用するのかもまだ決まっていません。大学入試センターは、高校の学習指導要領との整合性があることや、経済的に困難な受験生への検定料の配慮などの要件を示して、今月中旬をめどに募集し、今年度中に結果を公表するとしています。
しかし、民間の試験の入試利用には、語学教育の専門家の間から疑問視する声があります。成績の付け方が試験によって異なるため、大学入試センターは、結果を英語の国際基準に換算して段階ごとに分け、それを各大学に提供するとしています。しかし、そもそも目的が異なる資格・検定試験の成績を換算することに意味があるのかという疑問があります。また、すべての受験生が受けるとなった場合、試験を主催する団体がすべての受験希望者が受けられる体制を確保できるのかという問題もあります。公的な共通テストの一環として取り入れる以上、何らかの形で大学入試センターが運営に関与できる仕組みがなければ、トラブルがあった場合、検証もできない事態になりかねないと危惧する声もあります。


今回指摘しただけでも課題は山積と言った状態の大学入学共通テストですが、本来、1回の試験によって1点刻みで合否が決まる従来型の入試を変えることで、高校教育や大学教育を変えていくことが導入の原点でした。それがいつの間にか、記述式問題の導入や英語の4技能を測ることにとらわれ、本来の目的から離れた形で様々な課題を抱えたまま見切り発車が迫っているように思えてなりません。始めるからには、これまで築き上げてきた入試の信頼性そのものが揺らぐ事態にならないよう、最善の努力が必要です。
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イオン 岡山 ファミリーで「命」を守れ! 弾道ミサイルが落下する可能性がある場合にとるべき行動について(平成29年9月25日更新) 万が一に備える! イオンモール岡山 (帰宅困難者一時滞在施設)  岡山市との協定による避難場所編


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Yahoo 防災アプリ(万が一のミサイルに備える) /弾道ミサイルが落下する可能性がある場合にとるべき行動について(平成29年9月25日更新)

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