岡山 慢性硬膜下血腫 高齢化で高リスク 川崎医科大研究グループ分析


 高齢者に多い病気で、軽い外傷を原因に脳の表面に血がたまる「慢性硬膜下血腫」になった70歳以上の約2割が、治療後に介護が必要な状態となっていることが川崎医科大(倉敷市松島)の研究で分かった。高齢化に伴い患者数が増え、発症年代も上がったため、回復しにくい傾向が強まっているとみられ、研究グループは「深刻な病気になりつつある」と警鐘を鳴らす。

 宇野昌明教授(脳神経外科)のグループが厚生労働省のデータを使い、2010~13年度に慢性硬膜下血腫と診断された全国約6万3千人の状況を分析した。

 発症のピークは70~80代で全体の約7割を占めた。治療後、自宅へ戻れず介護施設などに入所する人は70歳未満で9・2%だったのに対し、70歳以上で22・7%。80代で26・2%、90代では38・1%となっている。30年前は男性患者が約9割だったが、近年は女性の割合が約3割まで増えている。

 関連学会などによると、患者数は年間約3万人と推計され、この30年間で約2倍に増えたとのデータもある。高齢化のほか、心臓や脳の病気で血流を良くする薬を服用する人が増え、転倒などで外傷を負った際、血が流れやすくなり、発症の拡大につながっているとの見方もある。

 宇野教授は「手術で症状が回復するため、医師の間では予後が良いと思われがちだが、高齢になるほどダメージが残りやすく怖い病気だと認識する必要がある」と指摘。「学会や市民向け講座などを通じ、情報発信に力を入れたい」と話している。

 慢性硬膜下血腫 転倒などによる外傷後、数週間から数カ月たって発症する。脳を覆う硬膜と脳の隙間に血がたまり、脳を圧迫するため、歩行困難や頭痛、物忘れなどの症状が出る。手術で血の塊を取り除けば、症状は劇的に改善する。認知症に似た症状が出ることから“治療できる認知症”とも呼ばれている。