複数の取引所に週内にも立ち入り検査へ、仮想通貨流出受け / コインチェック問題被害者「返すならNEMで」
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 仮想通貨の取引所「コインチェック」から巨額の仮想通貨が流出した問題を受け、金融庁がコインチェック以外の複数の取引所に対し、週内にも立ち入り検査を実施することが明らかになりました。

 580億円相当の仮想通貨が流出したコインチェックに対して金融庁は先月29日に業務改善命令を出し、今月2日に立ち入り検査を実施しています。

 また、金融庁はコインチェックを除く31の全ての取引所に対し、今月2日までに安全管理体制などを報告するよう求めていましたが、関係者によりますと、顧客の資産やセキュリティの管理体制などに不備のある取引所が複数見つかったということです。このため、週内にも不備のあった取引所に立ち入り検査を行うとしています。

 担当者に話を聞くなど詳細に調べることで、実態を把握する必要があると判断したものとみられます。


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「日本円での補償、利用規約に根拠ない」コインチェック問題被害者「返すならNEMで」

仮想通貨取引所コインチェックで約580億円分の仮想通貨「NEM」が不正流出した問題で、投資家の動揺が続いている。NEMを保有する約26万人全員に対し、合わせて約460億円を日本円で返金するとコインチェックは発表したが、「なぜ当たり前のように日本円で返すのか。NEMで返却するのが筋だ」と憤る投資家も少なくない。

●利用規約には「登録ユーザーの要求により」と記載
神奈川県内に住む20代の男性会社員もその一人だ。2017年夏に口座を開き、1XEM(NEMの取引単位)=13円程度だった頃に10万円を投じて約7600XEMを買い付けた。その後少しずつ買い増して、2017年末で約8000XEMを保有。2017年末のレートは、1XEM=106円程度で75万円ほどの含み益を抱えていた。

男性の相談を受ける勝部泰之弁護士は、コインチェックが登録ユーザーとの権利義務関係を規定した「利用規約」(2017年7月31日付)の書きぶりに注目している。

利用規約8条3項は「当社(コインチェック)は、登録ユーザーの要求により、当社所定の方法に従い、ユーザー口座からの金銭の払戻し又は仮想通貨の送信に応じます」と規定。一方、今回の日本円による補償を認めるような趣旨の条文は、利用規約の中に見当たらない。

勝部弁護士は「取引所のリスク分散のために、『仮想通貨での返還が困難な場合には当社指定の返還方法による』などという趣旨の条文があれば、今回の日本円による補償もやむを得ないと評価できるが、そのような規定はない」と指摘する。

●債務不履行として引渡し請求を検討
今後の対応方針は相談者の男性と検討中だが、提訴するとすればコインチェックが利用規約8条3項に定める行為をしないことを債務不履行と位置づけ、一義的には保有していた仮想通貨の引渡し請求をすることを視野に入れる。

「返還するNEMがなく、履行不能となった段階で初めて日本円による賠償となるのが筋だ。対応が一方的すぎる」と勝部弁護士。必要に応じ、コインチェック問題に取り組む弁護団との情報交換もする方針だ。男性は「NEMで預けているんだから、NEMで返してほしい」と願っている。

●長期保有、利益確定はまだまだ先のつもりが・・・課税も懸念
男性はもともと、NEMを日本円に変換するなどの利益確定をするつもりは当面なく、長期的に保有し、いずれタイミングをみて利益確定をする考えだった。「少なくとも2020年まではそのまま持っておこうと決めていた。納得がいかない」と話す。

「強制的な利益確定」により、2018年に雑所得が発生する形となり、2019年の確定申告で不本意ながら納税しなければいけないかもしれないという不安も大きい。勝部弁護士によれば、コインチェックの取引履歴データは見やすいレベルとは程遠く、一部は自ら計算をするなどして確定申告のための書類作成をしなければならない。

負担は大きく、税理士に雑所得の計算を依頼すれば、その分の税理士費用もかさんでしまう。勝部弁護士は「煩わしい書類作成を避けるため、帳簿(取引記録)が簡単にダウンロードできるようになるのを待ってから、利益確定をして確定申告をしようと考える投資家は意外と少なくない」と話す。
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