【岡山から伝えたい】真備住民の84%「水害に備えず」 第三者に「救助された」42%、地域防災力の低さ露呈

( 生活圏の「ハザードマップ」の確認と「ハザード行動」メモの作成・・・・ 「命を守るメモ」 )
「マップが身近なものと感じられるよう、作成時から住民の意見をよく聞くことが大切。(書き込んで学べる)ワークブック形式を採用するなど内容にも工夫が必要だ」


  200人以上の死者が出る「平成最悪」の水害となった西日本豪雨。被災地の地元メディアである山陽新聞社が、甚大な浸水被害を受けた倉敷市真備町地区の住民アンケート結果をまとめた。それによると、被災住民のうち42%が水害発生時に自ら避難したのではなく第三者に「救助された」ことが判明。真備町地区は過去に複数回、大規模水害に見舞われたことが各種文献や記録に残されているが「備え」をしていなかった人は84%を占めた。

 死者61人・行方不明者3人、約1万7千棟の家屋被害を出した岡山県をはじめ、各地に深い爪痕を残した豪雨災害は発生から1カ月余。アンケート結果は、浸水域の急速な拡大を背景に多くの住民が自宅などに取り残された可能性を示唆する一方、災害の経験や教訓を引き継ぐ難しさを改めて浮き彫りにしている。


避難しなかった理由
 アンケート結果によると、救助された人の内訳は、70代が33%を占め、次いで50代が21%、60、80代が各12%などだった。警察や消防、自衛隊、海上保安庁による救助者は地区内人口の1割に当たる約2350人に上ることが県災害対策本部のまとめで分かっているが、住民らによる記録に残らない活動を含めると、救助された人の割合はさらに膨らむとみられる。

 救助された人に避難しなかった理由を三つまでの複数回答で尋ねると「これまで災害を経験したことはなかったから」(62%)「2階に逃げれば大丈夫だと思ったから」(50%)が目立った。「その他」(38%)の自由回答では「水位が急に上がって逃げられなかった」「水が来るとは思わなかった」「雨で避難を呼び掛ける屋外放送が聞こえなかった」との記述があった。


避難行動のきっかけ
 自ら避難した人の「避難行動のきっかけ」(三つまでの複数回答)の上位3項目は「川の水位が上がってきたから」「携帯電話のエリアメール」「雨が激しかったから」だった。


過去の水害に対する知識と備えの有無
 真備町地区を巡っては旧真備町の町史が、江戸期以降の水害の歴史を数多く記録している。これらの「知識」と、水害への「備え」を問うと「知っていたが備えていなかった」が68%と最も多かった。「知っておらず備えもしていなかった」(16%)と合わせると、8割強が水害を身近なものとして捉えられていなかったことがうかがえる。

結果を分析した兵庫県立大の阪本真由美准教授(防災教育)は「残念ながら、地域の防災力が高いとは思えないような状況が示されている。水害はつらい経験ではあったが、被害を繰り返さないために、今後の対策にどう生かすかが問われている」としている。


今後の住まい
「元の場所に住み続けたい」
 西日本豪雨で倉敷市真備町地区は堤防が決壊し、面積の約3割が浸水。被災家屋は約4600戸と推計される。多くの人が住まいを失う中、アンケートでは約7割の住民が「元の場所に住み続ける、住み続けたい」と回答、地域への愛着が改めて浮かび上がった。

 理由として「自宅を離れたくない」(60代男性)との声があった一方、「そこから出られない」(50代女性)「金銭面が心配」(50代男性)といったやむを得ない事情を訴える人もいた。

 「転居を考えている」のは18%。真備町内は7%で、11%が真備町外と答えた。「今は考えられない」「検討中」は13%で、今後、元の場所での再建を断念せざるを得ないケースが増えてくる可能性もある。

 倉敷市は真備町地区で必要な被災者向けの住宅を4千戸と推計。民間賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設住宅」や空いている公営住宅の提供を行っているほか、同地区に木造とプレハブの仮設住宅150戸を建設し、同市船穂町にもトレーラーハウス50戸を用意する。

 住まいの再建を巡っては過去の災害でも、経済的な負担が大きな課題となった。地域コミュニティーを守るためにも、行政の支援は欠かせない。


避難生活で困ったこと、不足していること
「行政情報が足りない」
 41%が「行政情報」が不足していると回答した。「行政の支援がほしい」(70代男性)「行政の対応が遅い」(30代男性)といった具体的な指摘もあった。行政からの支援情報が行き届かず、住民が不満を募らせていることがうかがえた。

 以下は、風呂(27%)飲食(21%)衣類(19%)-と続いた。居場所別では避難所生活をしている人はトイレやプライバシーに不便を感じている人が目立ち、自宅や親族宅など避難所以外にいる場合は飲食、衣類、風呂に困っているケースが多かった。

 その他(17%)は、40代男性ら3人が「金銭面」を挙げ、60代男性は「精神的に参っている」と嘆いた。住宅で片付けを行う「人手不足」(40代男性、60代女性)、「野菜不足など食事の偏り」(50代男性)、「洗濯できない」(40代と60代女性)などの声が聞かれた。

「ハザードマップ理解」は24%
 倉敷市が大規模水害を想定して2016、17年に作成した「ハザードマップ」(危険予測地図)に関しては、75%が存在を知っていたにもかかわらず、内容を理解していた人は全体の24%だった。

 「知らなかった」と回答したのは25%。年代別でみると、30代以下では半数を超える人が知らなかった。

 ハザードマップは17年2月以降、真備町地区の全戸に配布。予測浸水域は西日本豪雨による実際の浸水域とほぼ重なっており、周知の在り方が問われそうだ。

 また、水害時に行くべき避難所を知っているかを尋ねたところ、79%が「知っていた」と答えた。ただ、80代以上のおよそ4割が「知らない」とし、高齢者らにどう情報を伝えるか、大きな課題を残したと言える。


回答者の年代・性別・現在の居場所
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 アンケートは真備町地区で被災して避難所、親族宅などで暮らしたり、同地区で復旧作業に当たる男女100人(男54人、女46人)に7月28日に実施。面談方式で、現在の居所▽水害発生時に避難したか、救助されたか▽避難場所を知っていたか▽ハザードマップが周知されていたか▽過去の水害を知っていたか▽避難生活で困っていること▽今後の住まい-の7問について尋ねた。



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2015 0915


倉敷市洪水・土砂災害ハザードマップ (平成28年8月作成、平成29年2月更新)

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岡山 倉敷 真備 ハザードマップ 住民に浸透不十分  西日本豪雨

「マップが身近なものと感じられるよう、作成時から住民の意見をよく聞くことが大切。(書き込んで学べる)ワークブック形式を採用するなど内容にも工夫が必要だ」


  西日本豪雨を機に、浸水や土砂災害の危険箇所を示す「ハザードマップ」(危険予測地図)が住民に浸透していないという課題が浮かび上がっている。甚大な浸水被害が起きた倉敷市真備町地区でも認知度は低く、避難時に生かされなかったとの声が目立つ。同地区ではマップの予測と実際の浸水範囲がほぼ合致。国は各自治体に住民への周知徹底をあらためて要請している。 「マップは一度見たことがあるくらい。これまで避難した経験もなく、自宅は大丈夫だと思っていた」 倉敷市真備町地区で被災した男性(69)が話す。雨が激しさを増していた先月7日、自宅から周囲の様子を見ていたところ、水かさが一気に増して2階近くまで浸水。近所の住民からボートを借りて何とか避難した。

■予測とほぼ一致 山陽新聞社が真備町地区の住民100人に先月行ったアンケートによると、75%がマップの存在を知っていたが、内容を理解していたのは24%にとどまった。同地区の別の男性(79)も「配られたときにざっと見た程度」と打ち明ける。 倉敷市は2016年に洪水・土砂災害ハザードマップを改訂し、高梁川や小田川が決壊した場合の浸水区域や深さを程度に応じ色分けして表示した。今回の豪雨では同地区の3割に当たる約1200ヘクタールが浸水し、予測と実際の浸水範囲がほぼ一致。住民に周知徹底されていれば、犠牲者は減らせた可能性がある。 市はこれまで、市広報紙とともにマップを全世帯に配布。広報紙でマップの使い方などの特集を組んだほか、自主防災組織などの依頼を受けて出前講座を開き、17年度は市内で48回(真備町では1回)開催し、マップの存在を知らせてきた。 それでも今回の豪雨で真備町地区では51人の死者が出た。市担当課は「マップが避難に生かせていなかったとすれば非常に悔やまれる」と声を落とす。


■身近なものに  周知不足は倉敷市に限らないようだ。砂川の決壊で周辺の2230棟が浸水した岡山市。16年3月に洪水・土砂災害のマップを改訂し、使い方の出前講座などを市全域で年170回程度開いているものの、防災担当者は「来るのは防災意識の高い人。家族や近所には広がらない」とこぼす。 真庭市は出前講座のほか、水害が起こりやすい5、6月に広報紙でマップ活用を呼び掛けてきたが「すぐ取り出せる場所に保管されていない。新たな周知方法を考えねば」と担当者は言う。 国土交通省は西日本豪雨を受け7月13日付で、マップを住民に周知徹底するよう各都道府県に通知。石井啓一国交相は会見で「マップの存在が知られていないなど、防災情報の確実な提供には改善すべき点がある」と語った。 防災マップに詳しい山陽学園大の渋谷俊彦教授(建築学)は「マップが身近なものと感じられるよう、作成時から住民の意見をよく聞くことが大切。(書き込んで学べる)ワークブック形式を採用するなど内容にも工夫が必要だ」と指摘する。

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