夏休み明け 子どもの自殺どう防ぐ 岡山県対策推進センター・佐藤医師に聞く



 夏休み明けの新学期に増える傾向がある子どもの自殺。SOSにどう気付き、対応していけばよいか。思春期の子どもの心の問題に詳しい岡山県自殺対策推進センター(岡山市北区厚生町)の佐藤俊介医師(35)=精神科=は「大人の側から声を掛け、まずは悩みをしっかり受け止めることが大切」と話す。

 ―なぜ夏休み明けに子どもの自殺が増えるのか。

 長い休みから現実の世界に引き戻される時期はストレスを感じやすくなる。何らかの悩みを抱えて周囲に相談できずにいると、そこにストレスが加わって心理的に追い込まれ、自殺のリスクが高まる。自殺総合対策推進センター(東京)が1973~2015年度の小中高校生の自殺について分析した結果、中高生の自殺は9月1日が最も多かった。

 ―自殺イコールいじめが原因と捉えられがちだが。

 実際は異なる。18年に全国で自殺した10~19歳を対象に、遺書などから特定できた原因や動機を1人につき三つまで調べると、「学校問題」が最多の188人だったが、このうち「学業不振」が57人、「進路の悩み」が46人、「学友との不和」が27人と続き、いじめは2人だった。ただ、自殺はさまざまな原因や動機が複雑に絡み合って起きると考えられる。

 ―周囲はどう関わるべきか。

 子どもは大人ほどうまく悩みを説明できず、自分から切り出せない場合が多い。大人の方から積極的に踏み込んで声を掛けていくことが重要だ。次に大切なのは傾聴する姿勢。子どもが勇気を出して相談した時に、大人はつい人生経験や知識を基にアドバイスしがちだが、それよりも子どもの悩みをしっかり聞いて、受け止めることを意識してほしい。

 ―子どもが出す異変のサインをどう認識したらよいか。

 食欲がない、眠れない、イライラする―など普段と違う様子が見られたら要注意。これまでの臨床経験で、子どもには悩みや不安を聞いてほしいという思いが絶対にあると感じている。教育を通じて子ども自身が苦しい時に他者に助けを求められる力を身に付けていく必要もあるが、それを受け止める大人の側が意識を変え、社会全体で子どもの自殺対策に取り組むことが求められる。