岡山 点灯時間緩和へ検討始める 瀬戸大橋ライトアップ



 ライトアップされた瀬戸大橋の上空に星が弧を描く。つり橋や斜張橋の主塔は黄金色に輝き、瀬戸大橋線の列車が橋げたを照らしながら通る。海上には行き交う貨物船の光跡―。

 自然の中に溶け込んだ橋の造形美にさまざまな光が共演し、その美しさに息をのむ。感動を味わおうと橋のたもとの倉敷市下津井田之浦には家族連れやカップルが次々訪れている。

 ただ、点灯の日数や時間は限られる。主に週末や休日だけで、多くは2時間ほど。秋の夜長とはいえ、今の時季は午後7時から9時までにとどまる。年間の点灯日数はこの2年間で56日増えて計136日になったが、総点灯時間は300時間と変わらず、1日当たりの点灯時間は短くなった。

 同じ瀬戸内海にかかる明石海峡大橋は毎日深夜まで点灯している。岡山県などが瀬戸大橋点灯の大幅拡大を求め、関係機関で検討が始まった。夜景をゆっくり楽しめるようになるか―。

「300時間以内」緩和を検討

 瀬戸大橋を夜間にライトアップする日数や時間の拡大に向け、年間の総点灯時間を「計300時間以内」としているガイドラインを緩和する方向で関係機関が検討を始めた。岡山、香川両県は、橋を管理する本州四国連絡高速道路会社(本四高速、神戸市)とともに検討委員会を7月に設置し、今冬に取りまとめを行う予定だ。

 「(瀬戸大橋という)人工物が地域に有効活用されるのなら、可能な限り活用してよいと思う」。7月29日、高松市で開催された検討委員会の初会合。オブザーバーで加わる環境省中国四国地方環境事務所(岡山市)の担当者の発言は、基準緩和に対する柔軟姿勢をうかがわせるものだった。

保護と利用

 瀬戸大橋は、瀬戸内海国立公園の中でも景観保全が一層求められる「特別地域」に立つ。このためライトアップは、本四高速と環境省が岡山、香川両県の希望を踏まえ1997年に定めたガイドラインに沿い運用している。ただ、総時間数などに確たる算出根拠はない。97年以前は年間300時間超だったが、当時の環境庁から異論が出たため見直したという。

 初会合で環境省の担当者は、国立公園も対象とする自然公園法の趣旨について「優れた景勝地を保護しつつ利用増進を図る」と説明し、国立公園への外国人観光客の誘客促進を目指す「満喫プロジェクト」を国が進めている現状を紹介。国の環境行政について「1本の木も切らせない印象があるかもしれないが、そうではない」と保護一辺倒ではないことを強調した。

海外誘客

 年間80日としていた点灯日数は、瀬戸大橋開通30周年の2018年度は123日に、19年度は西日本豪雨被災後の観光支援などで136日にそれぞれ増えたが、総時間数は300時間で据え置かれたままだ。

 岡山県は「究極は通年点灯」(監理課)の目標を掲げる。香川県は「観光振興に少しでも資するように」(交通政策課)と控えめだが、橋開通直前の1988年3月に知事名で本四公団総裁に毎日点灯を求めた経緯がある。両県とも、宿泊につながり消費効果が大きい「夜型観光」での活性化へ、思いは通底している。

 もともと国立公園は、優れた景観を広く観賞してもらい有効利用しようと制定された。特に瀬戸内海国立公園は、鷲羽山などからの眺望を重視して、日本で初めて指定された。自然だけでなく、建築物などの景観も対象だ。外国人観光客増による外貨獲得も指定の目的の一つで、現在増加している外国人観光客の誘客も期待される。点灯拡大はこのような国立公園の趣旨に合致するとも言える。

着地点

 本四高速によると、天文関係者からは観測への影響を懸念する声もあるという。検討委は、点灯拡大に対する観光客や飲食・宿泊施設などのニーズを把握しながら、観光、天文、自然保護など各分野の関係者が意見交換する「ワークショップ」を3回ほど開き、着地点を見つけ出す意向だ。

 「例えば瀬戸大橋の夜景と天体観測を組み合わせた観光の仕方もある。ウインウイン(相互利益)の関係を築き、橋の利用促進にもつなげたい」と本四高速調査情報課。開通31年になる瀬戸大橋という地域資産をどう生かすのかが、問われている。