米グーグル、「量子超越性」達成と発表 スパコン超える ( スパコンで1万年分の計算、3分(200秒)で Google「量子超越」 )

量子コンピューター


 米グーグル(GOOGL.O)は23日、最先端のスーパーコンピューターが1万年かけて解く複雑な計算問題を、量子コンピューターを使い数分間で解くことに成功したと発表した。コンピューター技術で飛躍的な進歩を遂げたとした。

グーグルの文書が数週間前に漏えいして以降、「量子超越性」を達成したとするグーグルの主張が正当かどうかについてさまざまな議論があった。グーグルはこの日、英科学誌「ネイチャー」で実証結果を報告した。

従来のコンピューターが「0」か「1」かを表す「ビット」を使うのに対し、量子コンピューターは同時に0にも1にもなるという「量子ビット」を使う。この状態を活用することで計算量が飛躍的に増えるという。ただ、計算間違いを防ぐために絶対零度近くに冷やす必要がある。


ピチャイ最高経営責任者(CEO)は今回の結果について、最初の宇宙ロケットと比較できるほどだと評価し、「科学技術の世界で働くものにとって、待ち望んだ『ハロー、ワールド』の瞬間だ」と述べた。

グーグルの量子コンピューターは53個の「量子ビット」をつないで計算。一連の乱数からパターンを検出するという複雑な課題を3分20秒で解いた。グーグルの試算によると、計算速度が最も速いスパコン「サミット」は同じ問題を解くのに1万年かかる。

同業者による意見はまちまちだ。米マサチューセッツ工科大学(MIT)のウィリアム・オリバー氏は、ライト兄弟による人類初の動力飛行に匹敵する成果だと称賛した。

一方で、グーグルが成果を過大評価しているとの指摘もある。量子コンピューターの研究でグーグルの競合である米IBM(IBM.N)の研究員は、ディスク装置を追加したスパコンは同じ計算をより正確に最大2日半で解けるとした。またグーグルの発表は、新型コンピューターが従来のコンピューターに取って代わることを示唆し、誤解を招くと指摘した。IBMの研究チームでディレクターを務めるダリオ・ギル氏はブログで「量子コンピューターが従来のコンピューターを『超越』することはない。それぞれ独自の強みを持っているため、協調することになる」と述べた。

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グーグルが主張する「量子超越性の実証」に、IBMが公然と反論した理由

グーグルが量子コンピューターによる「量子超越性」を実証したことを、最新の論文で正式に明らかにした。量子コンピューターが既存のコンピューターより優れていることを示す歴史的ともいえる研究結果だが、これに公然と反論したのがIBM。その異例ともいえる反論の真意とは。

量子コンピューティングの専門家たちの間で起きる技術的な論争が、その高尚ともいえるコミュニティの外にまで出てくることはほとんどない。だがIBMの量子チームは、公然とグーグルにけんかを吹っかけたのである。

IBMが技術論文とブログへの投稿で狙い撃ちしたのは、グーグルと米航空宇宙局(NASA)の共同研究から9月に誤って漏えいした科学的な結果である。それも歴史的な偉業となりうる成果だ。この論文の草稿には、グーグルが「量子超越性」という重要な到達点に達したと書かれていた。量子コンピューターを使って従来型のコンピューターでは不可能だったことができると証明したというのだ。

これに対してIBMの専門家グループは10月21日(米国時間)、量子超越性を達成したというグーグルの主張に重大な欠陥があると発表した。そもそもグーグルが、現代のスーパーコンピューターの能力を最大限に活用していないというのだ。IBMはブログでの投稿で、「このしきい値は満たされていません」と主張している。グーグルはコメントを控えている[編註:本記事の原文は10月21日公開。グーグルは10月23日付の『Nature』に査読済み論文を掲載した]。

グーグルの主張の意味すること

量子研究のコミュニティがIBMの主張とグーグルの動きを精査するには、時間が必要になるだろう。ルイジアナ州立大学の教授であるジョナサン・ダウリングは、現時点ではIBMの主張に一理ありそうだと指摘する。ダウリングは、「グーグルは従来型のマシンでは解決が本当に難しいと思っていた問題を選びましたが、IBMはその問題がグーグルが思っていたほど難しい問題ではなかったことを実証しています」と説明する。

最終的に誰が正しいと証明されようとも、量子超越性とは現時点ではあくまで理論上の話にすぎない。超越性を示すためにコンピューターに与えられる問題には、実用性がなくてもいい。量子超越性は、量子分野において長きにわたる「夢」の実現を示唆するマイルストーンなのだ。すなわち、量子コンピューターが電池の化学技術や医療といった複雑な分野における進歩を可能にし、新たな力と利益をもたらすことを意味する。

IBMは独自に量子研究の計画を推進し、量子分野に興味をもつ企業とのパートナーシップに取り組むと同時に、量子コンピューターのプロトタイプをこれらの企業とテストしてきた。そのパートナーの1社であるJPモルガン・チェースはこの夏、IBMの量子コンピューター上で金融リスクを計算する手法を見つけたという。

IBMとグーグルの論争は、量子コンピューティングの矛盾した状況を表している。量子コンピューティングはここ数年で驚異的な進歩を遂げており、IBMやグーグル、インテル、マイクロソフトなどの企業が大規模な研究チームを構築してきた。

なかでもグーグルは、量子超越性の実証が間近であると数年にわたって主張してきた。これは同社が競合と競ってトップクラスの専門家を引き込み、潜在顧客を集めていくうえで、有益かつ一方的な主張と言える。確かに量子コンピューターの実現はかつてないほど現実味を帯びてきたが、いまもまだ実用化にはほど遠い。しかも、どれだけ遠いのかすら判断しづらい状況にある。

激化する国際競争

9月にオンラインで漏えいしたグーグルの草稿によると、同社はプロトタイプの量子プロセッサー「Sycamore」とオークリッジ国立研究所の世界最速のスーパーコンピューター「Summit」の両方に統計数学の問題を与えた。そこで得た結果から、Sycamoreが3分20秒で解いた問題を解くには、世界最速のスーパーコンピューターでは約1万年かかると推測していたのである。

これに対してSummitを開発したIBMは、Summitはその問題を解くために数千年どころか2日半で完了できたはずだと主張している。しかも時間をかけて最適化して実行すれば、2日半よりも短期間で完了できる可能性もあるという。

それでもグーグルのSycamoreが記録したとされる処理速度より遅い。だが、そもそもカリフォルニア工科大学教授のジョン・プレスキルが量子超越性という概念を定義した当初、量子超越性を示すには量子コンピューターが古典的コンピューターではまったくできないことをする必要があるとされていた。

グーグルのライヴァル企業が、量子超越性を達成しようという同社の計画に疑問を呈したのは今回が初めてではない。グーグルが2017年に量子超越性のマイルストーンに近づいたと発表したあと、IBMの研究チームは“ゴールポスト”を動かしたかのような研究結果を発表している。

またグーグルは2018年初頭に「Bristlecone」と呼ばれる新しい量子プロセッサーを発表し、量子超越性の実証準備が整ったと主張した。そのあとすぐ、独自に量子コンピューターの開発をしていた中国のアリババの研究チームが、Bristleconeはグーグルが発表したことを実行できないとする分析結果を公開した。

研究者たちの本音

グーグルはSycamoreによる量子超越性の達成に関する査読済みの論文を公開し、同社の主張を科学的な記録として残すとみられている[編註:10月23日付の『Nature』に査読済み論文を掲載]。IBMが21日に発表した論文も査読が済んでいないが、IBMは査読を実施して改めて公開する予定だという。IBMに在籍するトップクラスの量子研究者のひとりで論文の共著者でもあるジェイ・ガンベッタは、グーグルの主張が最終的に技術者の間で受け入れられるかどうかという議論に、IBMの論文が影響を及ぼすことを期待していると言う。

IBMは今回、グーグルに対して技術的な懸念を表明するうえで挑発的ともいえる手法を選んだ。しかしガンベッタによると、IBMの動機はグーグルを敵に回すことではなく、「量子超越性」という用語への無益な期待をなくしていくことにあるのだという。

「量子コンピューティングは重要な技術であり、コンピューティングの方法を変えるはずです」と、ガンベッタは言う。「もう大げさに語るのはやめて、量子コンピューティングのロードマップにフォーカスしていきましょう」

量子コンピューティングの研究に取り組んでいるほかの物理学者たちも、量子超越性が最優先事項ではないことに同意している。それどころか、IBMとグーグルの争いも優先事項ではないという。

「わたしは量子超越性に関するこういった主張はあまり好きではありません。一度は“量子超越”とされた結果が、翌日にはひっくり返って古典的かつ劣った結果にもなりうるわけですから」と、ルイジアナ州立大学のダウリングは言う。「むしろ、特定の問題に対してマシンがどのように役立つのかに興味があります」

メリーランド大学の教授で量子コンピューティングのスタートアップであるIonQの共同創業者、クリストファー・モンローも同じ意見だ。IonQは巨大テック企業2社の学術的な論争よりも、初期の量子コンピューターの実用的な用途を提示していくことのほうに関心があるという。モンローは「今回の量子超越性を巡る議論によって、眠れない日々を過ごすようなことはないと思いますよ」と語っている。
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Google、量子コンピュータの「量子超越性」実証、スパコンで1万年を200秒

米Googleは10月23日 (米国時間)、量子コンピュータの「量子超越性」を実証したと発表した。スーパーコンピュータで10,000年かかると予測される計算タスクを、同社の54量子ビットの量子プロセッサ「Sycamore」が約200秒で完了させられる能力を示したとする。研究チームによる論文「Quantum supremacy using a programmable superconducting processor」が、同日に英Natureで公開された。

量子超越性とは、従来方式のコンピュータでは時間がかかり過ぎて手に負えなくなるような計算を、量子コンピュータなら高速に処理できる能力を指す。今回の実証実験において、Googleの研究チームは「ランダム量子回路サンプリング (random quantum circuit sampling)」を採用。Sycamoreに0000101のようなビット列を生成させ、スーパーコンピュータでも同様の量子回路をシミュレーションして比較した。

実験では、12量子ビットから53量子ビットまで量子ビットを増やした。量子ビットが増えるほど、スーパーコンピュータでの再現に長い時間がかかるようになる。最後は53量子ビットでの動作を確認した後、スーパーコンピュータのシミュレーションで再現不可能になるまで負荷を増やした。その結果、Sycamoreはおよそ200秒で、量子回路の1インスタンスを100万回サンプリングできる能力を示した。同研究チームは、米国オークリッジ国立研究所のスーパーコンピュータ「Summit」で量子回路シミュレーションの一部を実行し、従来方式のコンピュータでは同様の処理に10,000年かかると見積もっている。


Googleは2006年に機械学習開発を加速できる可能性から量子コンピュータ研究を開始し、2014年からは米カリフォルニア大学サンタバーバラ校のJohn Martinis教授の研究チームがGoogle AI Quantumチームに加わっている。

Google CEOのSundar Pichai氏は「量子コンピューティングを現実にするための探求において、これまでで最も意義深いマイルストーン」とコメントしている。暗号技術を用いたビットコインの価格が急落するなど、Googleの発表は様々なところに影響を及ぼしている。しかしながら、マイルストーン到達ではあるものの、量子コンピュータ実用化への道はまだ長く険しい。Pichai氏は研究チームの成果を「地球の重力圏を抜けて宇宙の端に触れるロケットの打ち上げに成功した」と表現している。Googleは、効率的なバッテリーの設計、より少ないエネルギー消費で化学合成できる肥料、医療効果を高める分子の解明などに量子コンピュータを活用できると見ており、実用化に向けた次のステップとしてエラー訂正が可能な量子コンピュータの実現を目指す。
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スパコンで1万年かかる計算を3分20秒で? 量子コンピューター

大手IT企業「グーグル」の研究者などのチームは、次世代のコンピューターとして注目される量子コンピューターが、従来のコンピューターをはるかに上回る性能を持つことを実証したとする論文を発表し、複雑な計算が必要とされる医薬品の合成や、経済・金融分野への応用など、実用化に向けた期待が高まっています。


アメリカの大手IT企業「グーグル」などの研究チームは、23日付けのイギリスの科学雑誌、「ネイチャー」に、量子コンピューターについての論文を掲載しました。

それによりますと、実験用に開発したプロセッサーを使って、乱数を生成する問題を計算させたところ、従来のコンピューターではおよそ1万年かかるという結果が出ましたが、量子コンピューターは3分20秒で計算を終わらせたということです。

量子コンピューターは、理論的には従来のコンピューターでは不可能な計算ができるとされていましたが、実証されたのは今回の研究が初めてだとみられ、グーグルは、実用化に向けた「大きな飛躍だ」としています。

将来的には、より複雑な計算が必要な医薬品の合成や、経済や金融分野の予測などへの応用が期待されていて、開発競争が今後、さらに激しくなりそうです。
「コンピューターの世界の新たな可能性開いた」
量子コンピューターは、従来のコンピューターとは異なる仕組みに基づいて計算を行います。

従来のコンピューターは、「0」または「1」のいずれかの状態の組み合わせで計算するのに対し、量子コンピューターは量子力学の原理に基づき、「0でも1でもある」という「重ね合わせ」の状態も利用できることから、より多くの情報を扱うことができ、理論上は従来のコンピューターをはるかに超える性能を実現できるとされてきました。

しかし、実際に計算を行える量子コンピューターを開発するには技術的に解決しなくてはならない問題が数多くあり、従来のコンピューターにはできない計算が本当にできるのかは証明されていませんでした。

今回の研究は、量子コンピューターでなくてはとけない問題があることを実際に示し、その可能性を実証しました。

マサチューセッツ工科大学のコンピューターの専門家は「ネイチャー」に寄せた記事で、初めて飛行機を飛行させたライト兄弟の業績になぞらえて「初めて量子コンピューターの超越性が示された」と評価しています。

また、グーグルのサンダー・ピチャイCEOは「今回の成果はコンピューターの世界の新たな可能性を開いた」とコメントしています。

一方で、今回の発表に関してはIBMなど一部の研究者から、検証の方法に疑義があがっているほか、計算で起きるエラーの訂正の手法や、新たな記録媒体の開発など、解決しなくてはならない課題が多くあり、従来のコンピューターのように一般に普及するまでには、まだ時間がかかる見通しです。
暗号資産の価格急落 その背景は…
論文が発表された23日、ビットコインなどのいわゆる仮想通貨=暗号資産の価格が一時、10%以上、急落しました。
背景には、
▽フェイスブックが計画していた暗号資産「リブラ」の発行を先送りする方針を示したことに加え、
▽量子コンピューターの開発によって、暗号資産を支える暗号技術が揺るがされるのではないかという懸念が広がったためとの見方が出ています。

現在、インターネットなどの通信で使われている暗号技術は、巨大な数の素因数分解など、従来のコンピューターでは計算するのに現実的ではないほどの長い時間がかかる問題を応用して作られています。

しかし、量子コンピューターがこうした計算を短い時間でとけるようになれば、暗号が解読される危険性が高まると指摘されています。

計算速度を飛躍的に向上させる量子コンピューターの出現は、私たちの生活をより便利にしてくれる可能性がある一方で、情報や通信の安全に対する脅威ともなり得ます。
このため、量子コンピューターでも解読できない「耐量子コンピューター暗号」の技術開発も進められています。
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参考



米グーグル、「量子超越性」達成と発表 スパコン超える ( スパコンで1万年分の計算、3分(200秒)で Google「量子超越」 )
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<量子コンピューター競争!?>   世界で開発競争「量子コンピューター」 東大が新技術 / スーパーコンピューター「京」超える後継機 主要部品を公開

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参考

「耐量子コンピューター暗号」の基礎理論?






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