特定秘密保護法 懸念拭えぬ恣意的運用


 公務員らの機密漏えいに厳罰を科す特定秘密保護法施行から5年が経過したのを受け、政府が施行令を改正した。

 秘密保護法の適用対象だった70の行政機関のうち、国税庁や検察庁など42機関は特定秘密を扱った実績がなかったとして外された。必要以上に法の網をかぶせていた実態が露呈したと言えよう。

 秘密保護法は安倍晋三政権が野党や世論の強い反対を押し切って成立させた「いわく付き」の法律だ。国民の理解を得たとは言い難い。改めて運用改善と抜本的な法改正に向けた議論が欠かせない。

 2014年12月に施行され、防衛や外交などで重要とみなした情報を政府が「特定秘密」に指定、厳格な保全を義務付けている。

 付則で施行後5年間に特定秘密を保有したことがない機関を適用除外すると定めており、特定秘密を扱えるのは防衛省や外務省、警察庁など28機関に絞り込まれることになった。それにしても適用対象が6割減とは驚きである。

 特定秘密の範囲は曖昧だ。法案の審議段階から国民の知る権利や報道の自由を損ないかねないと指摘されていた。菅義偉官房長官は「制度設計に何ら問題はない」とするが、制定当初の検討の不十分さが浮き彫りになった。

 政府は今年6月末までに12機関の計581件を特定秘密に指定した。ところが外部からは実態を把握するのが難しく、恣意(しい)的な「情報隠し」への懸念を拭えない。

 このため、内閣府に独立公文書管理監と、その下に情報保全監察室を、衆参両院に情報監視審査会を設けた。しかし行政内部の「身内」である管理監ではチェックが甘くならないか。唯一、外部の目で運用を見極める、国会の両審査会の責任は重いが、運用に問題があっても改善を勧告したことはない。これでは十分に使命を果たしているとは言えない。

 特定秘密に限らず、安倍政権では公文書のずさんな取り扱いや開示に対する消極的姿勢が際立つ。「森友・加計」疑惑や「桜を見る会」問題を見れば、時の政権の意向や、それを忖度(そんたく)して、官僚らが公文書を都合よく廃棄、改ざんし、意図的に保存期間を縮めている可能性がないとは言えない。

 政府が保有する情報は国民のものだ。即時公表できなくても、いずれ公開し、検証対象にするのが原則であり、もちろん特定秘密も例外ではない。秘密保護法を、不都合な情報を国民の目から覆う「隠れみの」にしてはならない。