ゴーン被告会見 逃亡は正当化できない
ゴーン 逃亡

 自らの主張をPRする「独演会」の様相を見せたという。

 金融商品取引法違反の罪などで起訴され、保釈中にレバノンに逃亡した前日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告が、8日に行った記者会見である。

 日本からの逃亡後、初めて公の場に姿を現し、世界の注目を集めた。

 ところが、核心部分である逃亡の経緯については、触れることを拒んだ。

 起訴に至った一連の事件は日産などの仕組んだ「陰謀」だ、と自説を展開しながら、関与があったとする日本政府関係者の実名は明かさなかった。

 これでは、「拍子抜け」と指摘されても仕方ないし、説得力がほとんどないだろう。

 金融商品取引法違反の罪は、役員報酬額を実際より少なく記載した有価証券報告書を提出したとするものである。これに対して、支払われる報酬額は確定していなかったとするなど、被告は東京地検特捜部による起訴内容を、一つ一つ否定した。

 私的な投資の損失付け替えや、知人らへの不正な送金で日産に損害を与えたとされた特別背任罪については、損失は生じていないと反論した。

 だが、十分な証拠を示したわけではなく、身の潔白を証明できたとは言い難い。自説が正しいと信じるならば、日本に戻り、裁判で堂々と訴えてもらいたい。

 そうはしたくないので、持ち出してきたのが、日本の司法制度に対する批判であろう。

 勾留期間が長く、自白を強く求める傾向もあり、基本的人権が守られていないと、内外から指摘されているのは事実である。

 しかし、このような批判をしたからといって、個別の起訴内容が覆ったり、保釈中の逃亡が正当化されたりするわけがない。

 記者会見の開催に際しては、日本の多くの報道機関を同席させなかった。明らかに、メディアの選別である。

 自分にとって都合のよい話だけを広めようとしたのだろうが、このような振る舞いは、かえって社会の信頼を失うのではないか。

 逃亡を受けて日本は、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて、被告の身柄拘束を求める国際手配を行った。

 レバノンとは犯罪人引渡条約を結んでおらず、身柄確保は難しいとされる。だが、逃亡は正当化されないとするなら、何らかの有効な手だてを講じるべきだ。