ファーウェイ副会長 米への引き渡し巡る審理 20日カナダで開始
米国(GAFA) VS 中国(BATH)


 おととしカナダで逮捕された中国の通信機器大手、ファーウェイの副会長の身柄をアメリカに引き渡すかどうかを決める審理が20日、現地の裁判所で始まります。副会長をめぐる問題は、貿易摩擦をはじめとするアメリカと中国の対立の象徴とも見られていて、審理の行方が注目されます。

中国の通信機器大手、ファーウェイの孟晩舟副会長は、経済制裁を科されているイランと取り引きしたなどとしておととし12月、アメリカの要請によってカナダで逮捕され、その後、詐欺などの罪でアメリカ司法省に起訴されました。

孟副会長は保釈され、カナダ西部のバンクーバーの自宅で生活していますが、アメリカ側が求める身柄の引き渡しに応じるかどうかを決める審理が20日、現地の裁判所で始まります。

孟副会長側はこれまで、イランとの取り引きを禁じているのはアメリカで、カナダでは犯罪にあたらないと主張してきたほか、今回の逮捕は、貿易摩擦などを念頭に中国に対して優位に立とうというトランプ大統領の政治的な思惑に基づくものだとして、身柄を引き渡さないよう求めています。

アメリカと中国の主導権争いがハイテク分野でも続く中、副会長の逮捕は両国の対立の象徴とも見られていて、審理の行方が注目されます。

孟晩舟副会長とは
孟晩舟副会長は中国内陸部、四川省・成都生まれの47歳で、父親はファーウェイの創業者、任正非最高経営責任者です。

1993年にファーウェイに入社し、主に財務を担当したあと、2011年に最高財務責任者となり、その後、副会長に就任しました。

前の夫との間の息子3人と、今の夫の間の娘の、合わせて4人の母親で、2014年からは息子の留学先であるアメリカのボストンを頻繁に訪れていました。

教育水準の高さなどで中国の富裕層に人気のカナダ西海岸バンクーバーに2009年と2016年に住宅を購入し、その資産価値は日本円で合わせて18億円余りに上ります。
これまでの経緯
ファーウェイの孟晩舟副会長はおととし12月1日、カナダ西海岸バンクーバーの国際空港で、アメリカ政府の要請を受けたカナダの当局に逮捕されました。

孟副会長は香港からメキシコに向かう途中で、乗り継ぎのタイミングをねらっての逮捕でした。

その後、バンクーバーの裁判所は副会長に犯罪歴がないことなどを考慮し、1000万カナダドル、日本円で8億4000万円余りの保釈金の納付、パスポートの提出、それにGPSで所在地が確認できる機器の装着などを条件に保釈を認めました。

一方、アメリカのトランプ大統領は孟副会長が逮捕されたあと、メディアに対して「重要な貿易交渉や国の安全保障のために必要であれば介入する」と捜査への介入も辞さない考えを示し、副会長を中国との貿易交渉の取り引き材料にするかのような発言が波紋を呼びました。

そして去年1月、アメリカ司法省はイランとの金融取引をめぐる詐欺などの罪で、孟晩舟副会長を起訴するとともにカナダに対して身柄の引き渡しを要請しました。

これを受けバンクーバーの裁判所では、孟副会長も出廷して審理の進め方が協議され、身柄の引き渡しを決める審理が、逮捕から1年以上たったことし1月20日から始まることになりました。

こうした中、アメリカ政府は去年5月、ファーウェイがアメリカの安全保障に反する活動をしているなどとして、アメリカ企業が政府の許可なくファーウェイに電子部品などを販売することを禁止し、締めつけを強めています。

アメリカと中国の両政府は今月15日、長期化していた貿易交渉で第1段階の合意に達しましたが、ファーウェイをめぐる問題は先送りされていて、ハイテクや安全保障の分野で主導権争いを続ける両国の懸案となっています。


審理の争点は
審理の争点は、大きく2つあります。

1つ目は、アメリカで起訴された内容が、カナダにも適用されるかどうかです。

アメリカとカナダは容疑者の身柄の引き渡しに関する条約を結んでいますが、カナダの国内法では、アメリカで訴追された行為が、カナダの法律に照らしても違法だとみなされないかぎり、身柄を引き渡すことは禁じられています。

孟副会長側は、イランとの取り引きを禁じているのはアメリカであり、カナダの法律には違反していないと主張していて、審理の中で、この点を強調するものと見られます。

そして2つ目は、逮捕の手続きに問題がなかったかという点です。

孟副会長は、バンクーバー国際空港で飛行機から降りて逮捕されるまでの間、係官から不当な尋問を受けたり、弁護士を呼ぶ権利があることを知らされなかったりしたとして、人権を侵害されたと主張しています。

今回の審理について、容疑者の引き渡し手続きに詳しい地元バンクーバーのブロック・マートランド弁護士は「副会長の逮捕をトランプ大統領がツイートしたり、中国との貿易摩擦をめぐる交渉の材料にしようとしたりするなど、政治的な側面がある、極めて特殊なケースだ。アメリカで銀行強盗をした容疑者が、逃亡先のカナダで拘束されたというような、単純な話ではない」と述べ、争点を慎重に整理する必要があると指摘しています。

そのうえで、「孟副会長は裁判所や司法相の判断が不服だった場合、上訴することもできる。すべての手続きが完了するには1年から2年、場合によっては数年かかる可能性もある」と述べ、最終的な結論が出るまでには時間がかかるという見方を示しました。