中学教科書検定 深い学び実現するには



 来春から中学校で使用する教科書の検定結果を、文部科学省が公表した。

 「主体的・対話的で深い学び」という理念を掲げた新学習指導要領の全面実施に対応するため、対話などを通した学びを促進する内容を手厚くした。

 各教科の平均ページ数の総量は前回から7・6%増の1万1280ページとなり、記録で比較できる2004年度検定以降で最多となった。

 「深い学び」を目指すという方向性は理解できる。一方で授業時間数は現在の指導要領から変わっていない。

 子どもが内容を消化し切れず、学力格差の拡大につながらないか懸念される。深い学びには教え方も工夫が必要になるが、教員の負担も無視できない。

 教員の長時間労働は中学校で特に深刻だ。文科省の調査によると、公立中教諭の6割は時間外労働が過労死ラインとされる月80時間以上となっている。

 部活動の時間短縮などで改善の兆しが見え始めた学校もあるとはいえ、厳しい状況が続く。

 文科省の担当者は「学習内容は全てカバーする必要があるが、軽重を付けるなど工夫してほしい」としている。

 教え方を研究するためにも、もっと余裕が必要だ。校務を減らし、支援の人手を増やすといった負担軽減策が伴うべきだろう。

 教科書には子ども自身が関心を高める工夫も盛り込まれた。

 社会の歴史では、歴史上の事柄を調べて話し合う学習をサポートする記述が充実している。

 江戸時代の赤穂事件で、あだ討ちをした浪士への処分を考える中で当時の社会を多面的に考察させるといった例がみられた。

 社会的課題にも多くのページが割かれた。地域のハザードマップを調べるなど「自分事」として自然災害に向き合えるような取り組みを促している。

 教える側の技術が問われる。一方的に講義する、従来型の授業からの転換をこれまで以上に求められるだろう。

 多忙な現場を意識してか、学びの手順が丁寧に書き込まれた部分もある。

 だが、授業の手引のような教科書への依存が高まり、かえって教員の工夫の余地をなくしかねないと懸念する声も聞かれる。

 教科書ばかりが充実し、授業が形式的になっては本末転倒だ。教員がじっくりと教材研究し、一人一人の子どもに目配りできる環境づくりが求められる。