京都 京産大クラスター、後手に回った空港検疫 水際対策に課題



 新型コロナウイルスをめぐって、欧州から帰国した京都産業大の卒業生から感染が拡大するなど、海外からの入国者を受け入れている空港の「水際対策」が問い直されている。無症状でも感染するウイルスの特性や感染力の強さ、欧米での急速な感染拡大への対策は後手に回り、国内の感染拡大を食い止められなかったことは否定できない。

 1月の国際線旅客数が過去最高の205万人に達した関西国際空港。厚生労働省の指示を受け、関西空港検疫所では7日から新型コロナウイルスへの警戒を始めていた。

 ただ、当初はポスターや館内放送で「武漢市から帰国した方でせきや発熱がある場合は検疫官に申し出てください」と呼びかける程度。旅客は次々に検疫所を通過していた。

 同月下旬には中国全土に新型コロナウイルスの感染が拡大し、無症状での感染事例も報告されたが、検疫の強化は遅れた。検疫所では2月7日にPCR検査を実施できる態勢となったものの、対象は有症者など感染の疑いが強い場合で、武漢を含む湖北省で過去2週間以内の滞在歴がある旅客に限られた。

 その後、厚労省は出入国管理法で「流行地域」として外国人が入国禁止となった国・地域について、すべての入国者にPCR検査を実施する方針を採用。同13日、「流行地域」に該当する湖北省と浙江省からの全入国者を対象に検査を始めた。

中国全土の入国者に網をかけない状況が問題視される中、政府は3月9日から中国と韓国からの入国者に2週間の自宅などへの待機、公共交通機関の不使用を呼びかける事実上の「入国制限」を始めた。3月に入って欧州、さらに米国でも感染が爆発的に広まったが、検疫所の対応はすぐには追い付かなかった。

 京産大の卒業生3人が欧州から帰国した同月中旬。検疫所では欧州からの入国者に特段の対応がとられておらず、卒業生らは難なく検疫所を通過している。危機的状況にあるイタリアやスペインからの入国者への待機要請やPCR検査が始まったのは同月下旬だ。

 政府は4月3日からようやく中国全土、欧米など新たに49カ国・地域からの外国人の入国禁止に踏み切るとともに、海外からの日本人を含むすべての入国者に自宅待機などを求める。検疫にこれ以上の遅れは許されない状況だ。

■関空の検疫「ぎりぎりの体制」

 新型コロナウイルスの感染拡大に、空港検疫が追い付いていない。近年、感染症は発生地で封じ込められる傾向にあったが、すでに世界的に感染が広がり、国内でも医療崩壊の懸念が強まる中、感染を最小限に抑える水際対策の重要性が改めて指摘されている。


 「ぎりぎりのところでやっている」

関西空港検疫所の担当者はこう打ち明ける。厚生労働省によると、「一時的にPCR検査対象者が急増しており、空港などで到着から入国まで数時間、結果判明まで1~2日程度待機してもらう状況が続いている」という。

 関空検疫所の職員数は約100人。検査の結果が陽性なら、医療機関への移送などの対応が必要になるが、担当者は「近隣の検疫所から応援をもらって何とかやっている。他空港や他省庁にも応援要請することも必要になりそうだ」と不安をのぞかせる。

 関西大の高鳥毛(たかとりげ)敏雄教授(公衆衛生学)によると、かつては米ニューヨークのエリス島に移民を1~2週間停留して検疫を行ったように、水際検疫は感染症対策の基本だった。近年は旅客数が膨らんだため、感染症は発生地で封じ込めることに重点が移った。

 日本では20~30年前から行政改革の一環として検疫所の人員が減らされ、代わりに国内でワクチンの開発や病院の整備などの医療態勢を拡充してきた。だが、新型コロナウイルスは発生源の中国で押さえ込めず、世界全体で死者推計2千万~5千万人に上った1918年の「スペイン風邪」を思わせる猛威を振るい始めている。


 高鳥毛教授はこうした状況を踏まえ、「水際対策の重要性を見直すべきだ」と指摘。「省庁間や自衛隊が連携して検疫所の態勢を強化する必要がある」としている。