岡山でミャンマー平和願う千羽鶴 高齢者施設入所者らが出身女性支援


  一つ、また一つ。細い指を動かし、折り鶴を仕上げていく。高齢者施設「せかんどゆーす西口」(岡山市北区)。入所者の女性たちが作っているのは、国軍によるクーデターで混乱するミャンマーの平和を願う千羽鶴だ。

 施設の運営会社「アイリーフ」(同)は、ミャンマー出身の女性4人を介護の技能実習生として受け入れている。ノーさん(21)、ケイさん(20)、スーさん(21)、マーさん(25)=愛称。2019年8月に来日し、同市内の2施設で働いている。

 死者は700人以上、4千人以上が拘束されたとの情報もある。家のドアを破られ、理由なく逮捕される。銃口は子どもにも向けられる。拘束された人は拷問され、性暴力を受けた女性もいる…。会員制交流サイト(SNS)などを通じて母国の知人らから、軍や警察による市民弾圧の状況が伝えられる。ノーさんの友人は拘束され、母親は自宅を離れ、身を隠しているという。

 「慣れない日本の生活や仕事に弱音をもらしたことはないのに…。泣き明かしてまぶたは腫れていた」。4人が“日本のお母さん”と慕う先輩職員の益岡扶美さん(53)は、2月のクーデター直後の様子を振り返る。当時は家族とも連絡が取れなかった。

 不安を抱えていても仕事中は一切、そのそぶりは見せない。普段通り、朗らかな笑顔でお年寄りに接している。そんな姿に職場から支援の輪が広がった。

 入所者に呼び掛けた折り鶴には形が整っていないものもある。認知症の人が震える手で作ったからだ。母国との通信費などに―と、10万円を贈った女性(89)は「一生懸命、日本語を勉強して頑張っているこの子たちの力になりたい。私は戦争を経験した。だからこそ争いのない世界を願っている」と訴える。

 職員は募金活動も始めた。4人の知り合いで、弾圧の被害者を支援している現地の僧侶に届ける。

 「家族のような支えをありがとう」と感謝する4人。「コロナ禍で大変な時だけど、ミャンマーで起きていることを知ってほしい。私たちの声を聞いてほしい」と平和、自由、平等を求める3本指のサインを掲げた。