岡山 コロナ後遺症 倉敷18歳男性“後遺症患者いることに理解を”

新型コロナウイルスの後遺症と診断され、入学したばかりの専門学校の休学を余儀なくされた、倉敷市の18歳の男性がNHKの取材に応じ、起き上がれないほどのけん怠感があるという、後遺症患者がいることを、広く知ってほしいと訴えています。

新型コロナに感染し、後遺症の苦しみを訴えるのは、倉敷市に住む18歳の男性です。
男性は、高校3年生だったことし1月、いわゆる“第6波”のさなかに新型コロナウイルスに感染し、けん怠感と38度を超える発熱のなか、10日間ほど自宅で療養しました。
登校を再開したあとも、1か月ほどせきが続いたということですが、ことし3月には治まり、体調ももとに戻ったといいます。
その後、高校を卒業した男性はことし4月、幼いころからの目標だったというパティシエを目指して、岡山県内の専門学校に入学しました。
希望を抱いて新たな一歩を踏み出したやさきの4月下旬、朝起きるのがつらいほどの、強いけん怠感に襲われたといいます。
男性は「大型連休の少し前に体のだるさを感じた。だんだんひどくなって一日中、布団の中で過ごすようになり、無気力で食欲もなくなった。生活リズムが乱れて昼夜逆転してしまった」と振り返ります。
その上で「自分が休んでいる間に、同級生が経験を積んで差が付いてしまうとか、SNSを通じて、楽しそうな学生生活を送っていることを知って焦りや不安を感じた」と当時の心境を語りました。
学校を休みがちになった男性は、単位不足のため、退学か休学の選択を迫られましたが、幼いころからの目標を諦めたくないと休学して、まずは体調を戻すことに専念することを決めました。
その後、かかりつけのクリニックの紹介で、ことし7月に岡山大学病院の新型コロナの後遺症の専門外来を受診し「後遺症」と診断されました。
男性は「感染から3か月がたっていて後遺症だとは思わなかった。診断がついてほっとしたし、家族や学校、アルバイト先も理解を示してくれた。患者は精神的にも弱っているので、まわりの人が優しく接することが大事だ」と話しています。
これまでに3回通院して漢方薬などを処方された男性はいまでも、後遺症の影響でよく眠れない日があるということですが、高校生のときから続ける飲食店での調理のアルバイトができるまでに回復。
いまは、専門学校のテキストで自習するなどして、来年の春の復学に向けて準備を進めています。
男性は「生活リズムを整えるために、朝、花壇の水やりから始めた。アルバイトに戻ったときは、筋肉痛が出て体力が落ちているとを感じた。感染してからしんどい生活でしたが、来年の復学が楽しみです」と話しています。

岡山市北区にある岡山大学病院は、去年2月に新型コロナの後遺症の専門外来を設置し、9月下旬までに400人以上の患者を診療してきました。
岡山大学病院によりますと「後遺症」の症状は、さまざまだということですが、思春期の患者のなかには、学校を長期間欠席するなど生活に大きな影響が出る場合もあり、患者のなかには不安を募らせる人が少なくないといいます。
後遺症のことを広く知ってほしいと訴える、倉敷市の18歳の男性をはじめ、専門外来で主に10代の患者の診療にあたる櫻田泰江医師は「出席日数が足りず進学ができないのではないかとか、志望校の受験がうまく行くか、部活動の大事な大会に出られないかもしれないなど、体調がすぐれない上に、不安を感じる患者が多い」と話します。
その上で「思春期は、心身ともに成長しさまざまな経験をする大切な時期だ。朝、起きられないような場合でも、午後から授業を受けられるようにするとか、自宅にいても勉強が出来る環境を整えるといった、学校など周囲のサポートが重要だ」と指摘しています。